「Project PRIDE」の体制は、私自らがプロジェクトリーダーとなり、完全なトップダウンで推進しました。実際の推進方法は、第1に私から方向性を提示し、KPIを定めました。第2に本部長クラスのリーダーのコミットメントを求め、リーダー自ら自分の言葉で目標設定し、何かあれば自ら解決する体制を整えました。
第3では、ここから人事担当にも活躍してもらい、仕組み化とテクノロジーの活用を進めました。悪しき慣習もあり、1年間で20件ほど人事制度を変更しました。第4として、一過性のものではなく、文化・風土として根付かせるために情報の発信やキャンペーンなどに努めました。ちょっと力を緩めると、すぐに悪しき慣習が首をもたげるので、あきらめずに繰り返し、今も定着化を進めています。
長時間労働はもうクールじゃない
この1から4までを、もう少し詳しくお話ししましょう。
(1)方向性の提示と継続的な効果測定
専門コンサルタントも参加し、経営上、最優先課題として年度初めの社長メッセージで周知しました。推進役のPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を立ち上げ、会社全体にイメージを浸透させるためにビデオも作りました。浸透状況の調査は4半期ごとに実施。残業時間や有給所得率などをモニタリングしました。
(2)リーダーのコミットメント
当社には経営会議メンバーが15人ほどいますが、当初は数名を除いて大半が反対でした。そこで、数カ月かけて一人ひとりを説得し、業績向上につながることを説明しました。そのうち、理解するようになり、各リーダーがそれぞれミッションを持って毎月の経営会議の中で、「個人別労働時間の実績・予測レポート」を発表し、議論するようになりました。
目標が達成できないような社員がいれば、リーダーが直接、プロジェクトや個人に対してアクションを取るなどリーダーのコミットメントを求めました。
(3)仕組み化、テクノロジー活用
ハラスメントの防止では、ルールの周知徹底はもちろんのこと、社外に窓口を設置し、通報しやすいようにしました。午後6時以降は上司が会議を招集することは原則禁止、時短制度も導入、一部の社員が使っていた在宅勤務制度を全社に拡大しました。また、「Project PRIDE」で優れた実践をしている社員やプロジェクトを表彰。生産性向上につながるツールやノウハウの共有を図りました。
(4)文化・風土の定着化
成功事例や社員の声などを定期的に発信。社内の壁一面に啓蒙メッセージを貼っています。例えば、「長時間労働はもうクールじゃない」とか。30デイズ・チャレンジとして、人事部から30日間ずっとキャンペーンを企画し続けました。
中でも最も効果があったのが、大切な人に感謝を伝えるキャンペーンでした。それまで体育会系のカルチャーだったので、簡単に集まらないだろうと思ったら、社員6000~7000人から1年半で1000通のメッセージが集まりました。奥さんや子供、親への感謝など、私は読んでいてうれしくて涙が出ました。この会社も変わってきたと実感した瞬間です。
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