3つ目は最もよくある、中堅社員の意見です。「上からたくさんの仕事を言われるので、残業せざるを得ません」。
なぜ仕事が増えるのかといえば、たいていの上司は、時間をかければいい仕事ができる、部下はいくらでもいるのでどんどん仕事を振っていったらいい、と考えているからです。いわば、時間も経営資源も無限にあるという幻想です。
このような「無限大」思考の相手には、「『無・減・代』で対抗しなさい」とアドバイスします。「無」は無視すること。言われた仕事をやらないのです。しかし、単に無視するだけではダメで、考えたうえで無視するのです。上司の命令は思いつきにすぎないから、今すぐやらなくてもいいだろう、というように。
「減」は減らす、です。前の人が報告書を10枚書いたから、自分も10枚書かなければならない、と思うのが人間の常です。しかし、全部を1枚で収めようとしても、たいがい2~3枚になってしまいますから、徹底的に減らせばいいわけですよね。10枚のレポートを1枚にしようと思ったら、これもまた考えないといけないでしょう。本当に大事なことだけに絞る、に徹して書いてみたらいかがでしょうか。
「代」は代用、使い回しのことです。「経営会議の資料にこんなグラフを作ってほしい」と言われたら、「ハイ」と答えて、1時間後ぐらいに1カ月前に作ったグラフを日付だけ修正して提出すればいいのです。しかし、これも考えて行動する必要があります。こういうことに使うデータなのだろうと想像して、それだったら1カ月前の数値でも経営判断に支障はないだろうと判断して、初めて使い回すわけですから。
「いかに仕事をしないか」を考える
ところで、この「無・減・代」は、私が考えたものではありません。売上高7000億円以上、2018年で創業100年、従業員3万人、全世界に事業展開する化学企業の会長に教えてもらいました。その企業は「無・減・代」活動の結果、コスト構造の抜本的な改革を成し遂げ、業績を伸ばし続けています。ちなみに、役員会の席次もアミダくじで決めるそうです。
以上のように、「無・減・代」には自分で考えることが前提になります。そして、同時に楽しいことも伴います。「いかに仕事をしなくていいか」を考えるのは楽しいですね。先述した「人・本・旅」も、仕事以外の、自分の好きなことを習慣化する勧めですから、楽しいはずです。
生産性を高める、あるいは働き方を変えるには、当たり前ですが、一人ひとりが考えて行動しなけばなりません。そして仕事は楽しくやる。そうやって成長していき、人生が豊かになってくれば、日本も変わっていくに違いありません。
(構成/寺島 豊=安曇出版)、編集:日経トップリーダー)
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