この行動を私流に言うと「人・本・旅」です。いろいろな人に会う、たくさんの本を読む、そして「旅」というのは現地に行ってみることの意味です。おいしいパン店ができたと聞いたら、実際に行って食べてみる、そんな習慣をつけてください。長時間労働のスタイル、あるいは、製造業と長時間労働が主流だったころの「メシ・フロ・ネル」を改め、「人・本・旅」を実践することが結局は生産性を高めることにつながるのです。
「クオータ制」を導入する理由
働き方改革の第2のポイントは、女性の活用です。74%を占めるサービス産業には、女性に特化したり、女性をメーンターゲットにしたり、女性を意識したりする業態が多数あります。デパートでは、一番いい場所は女性向け売り場ですし、買い物にも女性の意見が大きく反映されます。女性が今の日本経済を牽引していると言って過言ではありません。
同時に、サービス産業の消費側で女性の存在が大きいとすれば、企業側にも女性がいなければ、女性の嗜好が分かるはずがありません。つまり、作る側と買う側のマッチングが大切なのです。
少子高齢化を最初に経験したヨーロッパ諸国で「クオータ制」を導入する理由も、このマッチングからきています。クオータとは、ラテン語の「割り当て」や「分担」の意味で、議員や企業役員などで一定数の女性の登用を規定した制度がクオータ制です。対象者として女性に焦点を当てているのなら、為政者や経営者にも女性がいて輝いていなければならないという発想です。
日本は「女性が輝いている社会」には、まだ遠く及ばないようです。女性が輝くようになるには、男性も定時で帰って、家事や育児をやらなければなりません。その意味からも長時間労働はやめなければなりません。
「無限大」vs「無・減・代」
働き方改革の主眼は、「長時間労働をしない」「残業しない」になると思います。そうは言っても、「現実的には難しい」と諦めている人も多いでしょう。そういう人の意見や質問を3つのタイプに分けて、アドバイスしたいと思います。
1つ目は、高齢者で役員クラスの経験がありそうな人の質問です。「20代、30代の頃は、徹夜するくらいの根性で働かないと仕事を覚えないのではないですか」。
こんな質問があまりに多いので、私はワンパターンの答えを用意しました。「たぶん、そうかもしれません。私の勉強不足です。よろしかったら、20代や30代の長時間労働や徹夜がイノベーションを生んだとか、生産性を高めたとか、その労働者の市場価値を上げたとか、論文やデータをご連絡ください。そのご意見に従います」。この5年ぐらい、一度も送られてきたことはありません。
2つ目。若い社員からの質問です。「定時で帰ろうとすると、上司から『もう帰るのか』と言われ、帰りにくくなる」。
私は、こうアドバイスします。「一人で帰ろうとするから、嫌味を言われるのです。同期全員で一斉に帰るようにしたらいかがですか」。
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