トランプは「米国中間層の支持を得て大統領になった」と言われています。これを裏付ける、「象のチャート」というグラフがあります。20年間で世界の人々の所得がどれだけ伸びたかを、縦軸に所得の伸び率、横軸に貧困から金持ちまでの分布で表わしており、右を向いて鼻を上げている象の形によく似てきます。
横軸の中間辺りが最も高くなっているのは、中国など新興国の所得が増えたためです。また、鼻先にあたる最富裕層の所得も増えているのですが、その間の、先進国の中間層に当たる部分は所得が増えていません。これがトランプ支持に回ったというのです。
良いアイデアは「人・本・旅」から
日本は世界で最も高齢化の進んでいる国です。予算ベースだけでも、介護や医療費で年間5000億円の支出増となっています。これから先は、皆が貧しくなるか、それが嫌なら知恵を出してGDP(国内総生産)を上げていくか、の2択しかありません。GDPは就労人口×生産性ですから、人口が増えないとすれば、生産性を高めていくしかありません。そこで、働き方改革の第1のポイントは、生産性を高めていくことになります。
ある出版社にAとBの社員2人がいたとしましょう。Aは朝8時から夜10時まで働くけれど、作った本はさっぱり売れません。一方、Bは朝10時に出社するとすぐに誰かとコーヒー店にいく。夕方6時になると、会社を出ていく。でも、Bは年に3冊ぐらいの大ヒットを飛ばします。あなたが出版社の社長だとしたら、AとBのどちらを評価するかは明白ですね。Bは労働時間は短いものの、他の時間で人と会ってアイデアをもらっているからヒットが出せるのです。これが生産性を上げるということです。
Aの働き方は、一昔前であれば生産性が高かったかもしれません。テレビを組み立てる工場であれば、長時間働けば働くほど、たくさんのテレビができますから。つまり、製造業がビジネスモデルの主流であった時代は、長時間労働でもよかったのです。
しかし、現在ではサービス産業、第三次産業のことですが、これが全体の74%を占めるようになりました。サービス産業はアイデアや知恵が勝負ですから、長く働いたからといって売り上げが増えるわけではありません。むしろ、いいアイデアを出すために、脳の集中力が持続するといわれる2時間単位で切って、雑談やお茶をして、これを1日何回か繰り返すほうが効率的です。
さらに定時で帰って、仕事と直接関係のないことをするのがお勧めです。実はこれがいいアイデアを生み、イノベーションの源泉になるのです。勤務時間以外でも、仕事関係の勉強をする人はよく見かけます。MBA(経営学修士)やフィリップ・コトラーの本を読むなんてこともあるでしょう。
一方で、趣味など自分の好きなことをしたり、どこかに出かけたり、という人もいます。この両者について、日米はじめ、いろいろな学者が研究しており、その実証研究によると、画期的なイノベーションは前者からは起こらず、圧倒的に後者から出てくるのだそうです。すなわち、自分の好きなことを極めることが“急がば回れ”のごとく、いい仕事につながるのであり、ひいては人生も豊かになるのです。
Powered by リゾーム?