1995年に創業したリユースショップ大手、トレジャー・ファクトリー。衣料から家具、家電、雑貨まで中古品の取扱品目の幅が広いのが特徴だ。出店地域を全国へと広げ、2016年にはタイのバンコクへも進出。ブランド品のリユース会社を買収したりと、次の一手を積極的に打っている。しかし、創業時は「成功するわけがない」という意見ばかりだった。いかにして起業を成功させたかと、当時の思いについて創業社長の野坂英吾氏が振り返る。

リユース品の販売店をチェーン展開する企業には、本やCDのように、ジャンルを絞って展開しているところもありますが、トレジャー・ファクトリーの場合は、衣料品や日用品、スポーツ用品など多岐にわたっています。なぜ、幅広い商品を扱うのでしょうか。

野坂:リユースの根本は、いろいろなアイテムを買い取りし、買いたいというニーズとマッチングさせるところにあります。そのマッチングは、世の中の変化に合わせて変えていく必要があります。

 洋服などはまさにそうです。1995年の創業時には、不要になった服を売るという文化はそれほどありませんでした。不要な服とは、捨てる服のことだったのです。ところが10年くらい前からは、買ったばかりでも着ない服は売るという、世の中の文化が出来上がってきました。これなら、服に特化した店でユーザーのニーズを掘り起こせるだろうと、服に特化した新しい業態をつくりました。

<b>のさか・えいご</b> 1972年神奈川県生まれ。2歳から10歳まではシンガポールで過ごす。日本大学在学中に、学園祭の実行委員、起業支援組織の立ち上げなど、社長になるための活動に積極的に参加。卒業後の95年10月、開業資金30万円で総合リユースショップ第1号店「トレジャーファクトリー足立本店」を開業した。 その後、服飾専門リユースショップなどさまざまな業態を開発。2007年12月に東証マザーズに上場。14年に東証1部に市場変更。著書に『資金30万円から100億円企業をつくった社長が教える 勝ち続ける会社をつくる 起業の教科書』(日本実業出版社)
のさか・えいご 1972年神奈川県生まれ。2歳から10歳まではシンガポールで過ごす。日本大学在学中に、学園祭の実行委員、起業支援組織の立ち上げなど、社長になるための活動に積極的に参加。卒業後の95年10月、開業資金30万円で総合リユースショップ第1号店「トレジャーファクトリー足立本店」を開業した。 その後、服飾専門リユースショップなどさまざまな業態を開発。2007年12月に東証マザーズに上場。14年に東証1部に市場変更。著書に『資金30万円から100億円企業をつくった社長が教える 勝ち続ける会社をつくる 起業の教科書』(日本実業出版社)

 潜在していたニーズの芽が出始めたときに、その芽があるならと、ニーズを大きく顕在化させるような業態をつくっていく。私たちがやってきたことは、こういうことだと思っています。

 現在は、服に関しては価格帯を、300円くらい、2000~3000円程度、1万~2万円の、3つに分けています。もともとは、1つの店の中でゾーンを分けていましたが、現在は別業態の店にしています。服に関しては現在、4業態があります。

スマートフォンのフリマアプリを使い、個人間で服を売買するケースも目立ちます。どうご覧になっていますか。

野坂:我々も、ネットで販売するのに適したものはネットで、店舗で売るのに適したものは店舗で売るように、それぞれ力を入れていきたいと思っています。

 リアルの店舗の良さは、いろいろなものの中から選ぶワクワク感があるところです。ものを買うことにプラスアルファとして選ぶ楽しみを提供できるところに価値があると思っています。ですから、ネット上の取り組みも、リアル店舗の魅力も両方、磨いていきたいと思っています。

 今、物流が大きな社会問題になっていますが、地域ニーズがあるものはその地域で循環させ、そうでないものは広く流通させていく、それが究極のエコロジーです。リユースを考える上では、この両立が必要だと思います。