100日計画により戦略の骨子は2012年4月末には固まり、12月には本社からも承認が下りて、翌1月から本格的な新しい展開が始まりました。本社の承認に時間がかかったのは、投資金額がそれなりに大きかったからだと思います。
その後も100日程度の期間でプロジェクトを進めていきました。例えばシステムを、要件定義、設計、開発と2、3年かけてつくっていたら、出来たときにはもう時代遅れになっているというのが従来のパターンです。技術の進歩は速い。それに、当社にはさほど大きなレガシー(遺物)もありませんでしたので、次々と新しい成果を打ち出せました。
短期で事を進めていくと、自分たちが速いペースで学習ができるというメリットもあります。1つ例を挙げると、2013年に「終身医療保険」を発売していますが、そこでの経験を踏まえ、15年には「終身医療保険DX」を開発・販売しました。レベルアップした商品で、さらに拡販ができているわけです。代理店が営業に使うシステムも、まず13年12月に出来上がり、翌14年7月にはより使い勝手の良い拡充版を展開できています。
「5つの約束」は社員の声から生まれた
太田さんは、外資系高級ホテルのサービス方針を彷彿とさせるようなZ.Q.(Zurich Quality、チューリッヒ生命のサービス品質に対するコミットメント)も決めています。これには、どのような狙いがあるのでしょうか。
太田:Z.Q.は、お客様一人ひとりの立場や状況を理解し親身になって寄り添う、お客様の期待を上回る価値の提供を目指すなど、お客様に対しての5つの約束ですが、自然発生的に生まれているのです。私とマーケティングの野口(俊哉)という人間とで、チューリッヒらしいサービス部門の“ブランド”が欲しい、ただし現場の声を吸い上げたものにしたいという思いでつくりました。

現場の声を吸い上げるためのインタビュアーやカメラマンは外部に委託しましたが、社員も付き添って、コールセンターのケアスタッフや商品開発担当者、私どもの業界で“真実の瞬間”と呼ばれる給付金をお支払いする仕事に従事するスタッフ、そういった社員に直撃インタビューし、その中で生まれてきた言葉をまとめたものです。
サービスをブランド化して商品力を向上させようという狙いがあるのだと思いますが、チューリッヒグループ全体には、もともとこの5つの約束のようなものがあるのではないですか。
太田:さまざまなステークホルダーに対してチューリッヒグループの社員としてどうあるべきかを定めたチューリッヒ・ベーシックスという行動規範はあります。一方でZ.Q.は、私どもが目の前のお客様に対して何を大事にすべきかにフォーカスして表した決まりなのです。
(後編に続く。構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー)
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