「いっぱい給料もらっているくせに、ホントに使えない」「人が足りないんだから、もっと働いてほしい」「なぜ新しいことにチャレンジしようとしないんだろう」──。
 職場にいる中高年社員を見て、こんな不満を抱いている経営者や若手社員は多いはずだ。こんな社員の姿は、若手にとって「ああはなりたくない」という悪いお手本となってしまい、貴重な人材の流出にもつながりかねない。
 しかし、そんな中高年の「代わり」を見つけようとするのは現実的ではないし、人手不足の昨今では難しい。

 一方、中高年にも言い分はあるはずだ。役職定年を迎えたり、幹部ポストを巡る「椅子取りゲーム」に破れたりすれば、当然、やる気にも影響があるだろう。かつての部下が上司になれば、心の中はさらに複雑になる。
 仕事面だけでなく、自身や家族の健康問題や介護に直面する年代でもある。
 こういった千差万別の事情を理解しないまま、若手や中堅社員と同じマネジメントをして、本来持っているやる気を失わせている面もありそうだ。

 では、中高年社員のやる気を取り戻し、戦力化することはできるのだろうか?
 「日経トップリーダー」6月号ではそのための事例や具体的な方法について特集したが、ここでは、そのうち専門家の話を紹介したい。

 重要なポイントが「承認欲求」だ。この承認欲求については、既に耳にしたことのある読者も多いだろうが、中高年の場合「ゆがんだ」かたちで表現される。
 このゆがんだ承認欲求を理解しないまま、若者と同じような感覚でマネジメントしても失敗する。言い換えれば、正しく理解すれば、やる気がないように見えた中高年が見違えるように生き生き働き、若手のやる気までアップする可能性もあるのだ。

 モチベーション論を専門とする同志社大学の太田肇教授に、中高年の承認欲求について語ってもらった。

 承認欲求とは、心理学や哲学の世界でよく使われる概念で、「他人から認められたい」という気持ちのこと。承認欲求というと、若者の専売特許のように思われがちだが、誰もが根源的に持っている欲求だ。

 この承認欲求と仕事のやる気は深く関係している。

「承認欲求を満たすと、社員のやる気が向上し、結果として業績が向上する」ことは、研究結果が示している。これを活用しない手はない。

「割に合わない」が原因

太田肇(おおた・はじめ) 同志社大学政策学部、同大学院総合政策科学研究科教授。組織論、モチベーション論を専門とする。『承認とモチベーション』(同文舘出版)など著書多数

 ビジネスパーソンのやる気の最大の源泉は承認欲求で、それは出世や昇給という形などで満たされる。

 しかし、すべての中高年社員に役職や高い給料を与えることは経営上難しい。働く側としては、仕事をやっても、やらなくても給料は同じ。まして仕事内容は変わらないのに給料だけが減ったのであれば、やる気を維持せよと言われても困るだろう。

 給料の多寡より、自分の仕事の成果が額に反映されないことが、彼らのやる気を引き下げるのだ。この「割に合わない」気持ちを埋め合わせ、気持ちに折り合いをつけてもらうことが大切だ。