日本の大手家電メーカーが衰退するのを尻目に、ドイツには創業118年目を迎えてなお、無借金経営で売り上げを拡大し続ける家電メーカーがある。「Miele(ミーレ)」がそれだ。洗濯機や掃除機、食器洗浄器などの家電を世界100カ国で展開し、高い性能と使いやすさ、洗練されたデザインを備え、多くの人から長く愛されている。
日本でも消費者の心をつかんでいる。今月来日した同社のラインハルト・ツィンカン共同経営者兼社長によると、日本での売り上げもこの5年間で2倍に増えたという。
「私たちがつくっているのは、今必要とされる製品ではない。常に将来のニーズを見据え、長期的な視野で価値を生み出している」と語るツィンカン社長。同社が100年以上もの間、強くあり続け、消費者の心を離さない理由はどこにあるのか。ミーレの秘密を解き明かす。

ドイツの首都ベルリンから西へ約400㎞、ギュータスローという人口10万人ほどの静かな街に、創業118年目を超える高級家電メーカー、ミーレの本社がある。
2015年、ミーレはドイツの市場調査会社などが実施する「ベストブランド賞」の企業部門で、BMWやアディダスを抑え、1位を獲得した。

ミーレの洗濯機や掃除機、食器洗浄器などの家電は、高い性能と使いやすさ、洗練されたデザインを備える。現在世界約50カ国・地域に現地法人を持ち、1万9100人の社員を抱える。その製品は20年以上の使用を想定してつくられ、厚い信頼と支持を得てきた。ドイツの家庭では、代々ミーレの家電を引き継いで使うことも多い。
同社の創業は1899年。技師のカール・ミーレ氏と実業家のラインハルト・ツィンカン氏が共同でクリーム分離機製造を始めた。以来、4世代にわたり、ミーレ家とツィンカン家で経営を続けてきた。創業時からのルールで両家から1人ずつ、常に2人の社長を置く決まりとなっている。

リーマンショックの影響も軽微
16年6月期の売上高は前期比6.4%増の約4638億円。前年比数%の伸び率で推移を続けている。
「ミーレが目指すのは急ぎ足の成長ではなく、一歩一歩、市場環境などに左右されない自然な成長(オーガニック・グロース)だ」(ミーレ社長)。前年を割ったのは08年にリーマンショックが起きた際だったが、売上高の減少幅は1.2%にとどまった。

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