菊池:私たちが地域へ出向くと、その地域の生産者が集まってくれます。同じ地域の生産者でも情報交換できていないことがあります。ところが、生産者が集まってくれるその場では、つながっていなかった生産者同士が情報交換します。私たちは彼らの触媒の役割も果たせる、ということを強く意識しています。

 なので、頻繁に産地へ出掛け、情報交換するためのコストや人のパワーも確保したい、そのために、それ以外のところではITを使ってコスト削減を徹底しています。

 需要者側のレストランは今、約4300軒が利用してくれていますが、東京のほか、大阪、福岡、仙台、場合によってはインドのニューデリーや中国・上海など、産地から離れてしまった国内外のあらゆる都市部にも展開していきます。その場合、ものの流れはローカル to ローカルも重要ですし、日本 to 上海や中国 to インドもあるでしょう。

 熊本のレタスと台湾のレタスの違いを考えたとき、東京という消費地からすると距離の違いはありますが、適地・適期・適作ならどこの地域、どこの国から出荷してもいいのではないかと思っています。生産者が、そこで作りやすい需要のあるものを作ることに特化したデザインができればよいと思っています。

ロスもタイムラグもない食材流通を目指す

 今、インドと言いましたが、インドや東南アジアの一部は都市化が進み、世界中から多彩な食べ物が集まってきています。一方で都市化が進めば進むほど消費地と産地の距離は広がります。特にこれらの地域ではインフラが未熟で、日本以上にロスが出てしまっています。

 そこにコールドチェーンを含めた私たちの仕組みを提供できれば、食料ロス問題がかなり解決し、食料不足も緩和できるはずです。ロスがない、タイムラグもないという食材の流通が実現したら、社会や食生活がどうなるのか見てみたいと思っています。

 これは私の願いですが、食べ物を「自分ごと」にする人を増やしたいと思っています。普段の食事では、これは誰が作って誰が運んだものなのかなどについて無意識でいるのではないかと思います。ですが、そこに少しでも関心を持つ人が増えれば、食生活を視点にしたときの社会はかなり変わると思います。

 今、多くの人の脳内で、食べ物への関心が占める割合は10%程度ではないでしょうか。本来、人間の食べ物の確保に対する関心度はもっと高いはずです。私たちが、この10%程度を30~40%ぐらいに高められるよう貢献できればと思っています。

菊池 紳(きくち・しん)プラネット・テーブル代表取締役社長。起業家。ビジネス・デザイナー。1979年東京生まれ。大学卒業後、金融機関や投資ファンドなどを経て、2013年に官民ファンドの創立に参画し、農畜水産業や食分野の支援に従事。14年にプラネット・テーブルを設立。「SEND」(17年度グッドデザイン金賞受賞)、「SEASONS!」「FarmPay」などITによる新しい食材流通のためのサービスを開発・運営中。起業家をたたえるNext Rising Star Award、EY Innovative Startup 2017も受賞している(写真:山本祐之)

(この項終わり。構成:片瀬京子、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)