菊池:とは言え、顔が見えてもコストが合わないと取引は成立しません。また、買う側が食材を本当にいいものかどうかを判断できるプラットフォームもそう多くありません。ほかの生産者の農産物と比較して「こうしてほしい」と生産者に要望を伝えられることもほとんどないと思います。

 私たちはここを改善しています。誤解を恐れずに言えば、今は、生産者にスポットを当ててコンテンツ化するのがブームになっています。しかし、そこで本当に需要者と生産者のコミュニケーションが密に発生しているのか、という問題意識があるのです。

 料理人は多種の食材を少量ずつ欲しい。料理を一品作るのに10種類の食材が必要だとすると、ある食材はAさん、別の食材はBさん、それからCさんから買いたいのですが、別々に発注していると相当な手間がかかります。送料も高くなる。

 実は、料理人と生産者の個別取引では価格が折り合わないことが多く、その大きな原因になっているのが送料です。生産者は、少量を発注されても困るわけです。

 コストを合わせ、実際に取引を成立させるには、物流などの仕組みが必要です。私たちは生産者に「1トンお願いします」とだけ依頼し、そこから1000軒の需要者に1kgずつ配るのは私たちが実行します。オーダーにきっちり合う量だけを無駄なく届ける。オーダーを待っていたら、中3日、中4日かかってしまうので、予測して発注できる仕組みが必要になるのです。

 ゆくゆくはSENDを、電気、ガス、水道のように、誰にでも身近に使えるインフラにしたいと思っています。このシステムは将来的には、使いたい人には誰にでも使えるようにするつもりです。

SENDでの食材の流れ。買い手側の需要データを常に分析、その結果を事前に発信しているため、適量の新鮮食材がSENDの物流センターに送られてくる。これを仕分けして配達する

作付け前にお金を支払う手付け払いも

決済用の「FarmPay」というシステムも提供しています。

菊池:生産者の出費が最もかさむのは、収穫期です。収穫・梱包・出荷にパートを雇えば人件費がかかりますし、種、肥料、資材の代金回収もこの時期に来ます。

 JAや市場を通していれば話は別ですが、直接取引の場合、大抵の取引が月末締めの翌月末払いになるので、例えば4月頭に出荷した商品の代金が入金されるのは5月末になり、それまで待てないという生産者は少なくありません。

 このため生産者は、例えば直接取引なら価格が5万円になるのに、2万~3万円でも入金が早い取引先に出荷してしまうことがあるのです。5万円で出荷して、すぐにその代金が振り込まれるならそれが一番いい。FarmPayはそれを実現するサービスです。

 最近では、食材の作付け前にお金を支払う手付け払いもテストしています。買い取り予約して代金を支払い、後に販売できた時点で現物精算することと同義なので、生産者の皆さんにとても喜んでもらえています。SENDとの同時利用率は非常に高くなっています。

この先の目標について教えてください。

菊池:日本国内で、4万軒ぐらいの生産者を支援したいと考えています。耕地が狭くても、専業で食べていける農家が4万軒くらいになれば、と思います。

 今、SENDを利用してくれている生産者は4500軒ほどですが、9割以上は50歳以下の人たちです。彼らは、10年後、15年後に地域の情報発信やその地域に適した農業のリーダーになる人たちだと思っています。