菊池:食材を作るのには時間がかかりますし、それを商品にしたとき、世の中に周知・普及させるのにも時間がかかります。短期的なお金を付けても良くはならない、持続的に支える仕組みが必要なんです。

 そこで、1次産業そのものをデザインし直すつもりで、プラネット・テーブルを立ち上げました。まず「SEND」というサービスをつくりました。これは、生産者が需要に即した食材を作り、ロスなくタイムラグなく需要側に届けるための仕組みです。

 (世界的に見れば)今後は人口が増加するのに、生産者がいなくなってしまうと言われています。そのため、関係者の間では生産者を残すにはどうしたらいいかという議論があるのですが、農業を働きがいがあり、なりたい職業になるよう、高いモチベーションを維持できる仕組みをつくることが大事だと思います。

SENDはその思いを具体化したサービスだと思いますが、どのような仕組みなのですか。

菊池:需要を生産地に伝え、その需要に応えて作った食材がタイムラグもロスもなく、食べる人に届くシステムです。利用者はスマートフォンやパソコンで使います。生産者側では、当社のバイヤーからの出荷依頼を見たり、買う側は、仕入れられる食材リストを見て、そこから簡単に発注ができます。

 ITシステムも物流の仕組みも自社で持っています。発注者側の、日頃の需要をデータ化し、それを分析していますので、私たちは生産者側に適切な生産を促すことができます。生産者は私たちの物流センターに出荷し、発注者には私たちが直接届けます。取引できる対象は農作物から畜産物、一部水産物へと広げてきました。

プラネット・テーブルが提供する「SEND」を、料理人が仕入れに活用しているイメージ。スマートフォンのアプリやパソコンで発注すれば、注文前日に収穫された食材を発注した当日に手に入れることもできる

事前に生産者に発注し買い取る

 SENDでは、発注してもらう側、つまりお届け先を外食店に特化しました。一般の消費者に多彩な食材を供給しても「調理の仕方が分からない」といった反応が中心になり、生産者の生産技術や収益の改善につながる要件が出にくいのです。

 一方で料理人は、「盛り付けに使うので、もっと小さいものが欲しい」など、生産者が理解でき対応できる具体的なリクエストを出せます。生産者のモチベーションを維持できるパートナーとしては料理人が最も適していると判断したのです。

 非常に興味深いことなのですが、外食店の需要の多寡は曜日や天気によって読みやすいんです。イタリアンなのか和食なのかといった業態や立地も予測のための条件になります。複数店舗のデータを分析すると、類似した業態や店舗の需要傾向が分かります。

 需要に応じて需要者と生産者をつなぐとは言いましたが、料理人が発注した後に生産者が農作物を準備して発送するのではなく、日頃のデータで予測した量を、私たちが事前に生産者に発注し、買い取る格好になっています。

 このように需要と生産をマッチングさせることで、料理人が発注した日のうちに、前日に産地で収穫されたものを手元に届けることができます。データを分析する店舗の数、そして期間が増えれば、精度は上がっていきます。どちらかというと、店舗数よりも期間のほうが重要です。ある時期は毎日発注する食材も、ある時期には減るということもあるからです。

(後編に続く。後編の掲載は6月8日の予定です。構成:片瀬京子、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)