菊池:それまで私が働いていた環境では、結果が出なければ叱られて指導され、出れば評価されます。仕事の対価も仕事の評価と連動していました。だから必死に勉強するし頑張ります。それに対して農業では、自分が成長している実感が得にくいんです。

 食べ物を作るのは楽しいし、できたものがおいしく、誰かに食べてもらえればうれしいし誇らしいことなので、前述のような業界の構造を変えることができれば、農業をはじめとした食べ物を作る産業は生き返るだろうと思いました。

 もともと20代で集中的に自分のスキルを磨き、30歳で独立したいと考えていました。そこで、10年ぐらい農畜水産と流通をテーマに仕事をし、プラネット・テーブルは4年前に設立しました。

うまくいっていない6次化が多くあった

プラネット・テーブル起業前の数年間はどんなことをされていたのですか。

菊池:コンサルティングです。食品会社や外食、流通系の会社と産地をつないだり、流通改善や効率化、サプライチェーン・マネジメントの支援などをやっていました。

 そうした中で川下の企業側からは、食材は国産へ切り替えたいがなかなか見つからない、産地側からは出荷先がないという声が聞こえていました。需要者からの要望に応えて農作物を作れる生産者はいます。それなのに、この両者はつながっていないのです。情報が通っていないんですね。

 そこで、ある食品企業はこういう農作物が欲しいけれど、生産者はそれを大量に作るには人手が足りない。ならば、その会社が農機を購入し、生産者に貸し付けて、収穫したものはその会社に優先的に出荷するという橋渡しをしたことがあります。

 また、スーパーに並ぶような生食用ではなく、加工用の食材を求めていた外食企業に対して、生産者には最初から加工用の食材を作ってもらい、安定供給をするといった手伝いもしました。

 その後、農業者などが6次産業化を図るためのファンドを農林水産省がつくるという話があり、設立から1年間だけお手伝いしました。

 そこで、多くの生産者の皆さんと話をしましたし、うまくいっていない6次化の例もたくさん見ました。6次化では、当事者が補助金頼りの体質だったり、売り先を確保する前に設備を入れてしまっていたり、また皆同じものを作りたがる傾向もありましたね。どのような付加価値を持たせ、どのくらいの量を作っていくという事業計画をしっかり持っていないケースが目立っていたのです。

プラネット・テーブルのスタッフは、たびたび産地を訪れる。写真の「キャラバン」では、専門家も招き、産地に学びの場を提供するといった活動もしている。産地との交流は、菊池氏が同社を起業する前、多くの生産者と会った経験が生きている