限られたリソースをどこに集中させるかは、経営者が頭を悩ませるところです。

是枝:そこも反省だらけです。うちが今の程度にしか伸びなかった理由の1つはパソコン対応です。これをためらったことを今でも後悔しています。

 会計ソフトなどをパソコン対応した際、オフコン用が300万円くらいだったので、パソコン用も100万円程度の価格を付けたのですが、他のメーカーが数万円の商品を出してきました。それは私たちが作ったものとは機能やターゲットが違う商品でしたが、もしも別会社をつくってやっていれば、ミロクというネームバリューもあったことですし、新興の企業に勝てたのではないか。経営者として最大のミスジャッジだったと思っています。

経営理念を貫き自社の価値を知る

そこからはどのように盛り返しましたか。

是枝:お客様に対しては着実に仕事をしてきました。私がエンジニアなら、エンジニアとしての欲求を満たすために仕事をしたかもしれませんが、私はマーケットの方を向いてユーザーニーズに応えるという姿勢を貫いてきました。

 そのうえで、ユーザーの意識まで変えるものを提供したかったのですが、その意識を現場に醸成させるところまでは持っていけませんでした。

 けれど、これからでも遅くないと思っています。2005年に息子の周樹に社長のバトンを渡しました。彼には思い切ってチャレンジしろ、ベンチャー精神を忘れるな、と伝えてあります。

オーナー企業を二代目が継ぐとベンチャー精神が薄れるといった声も聞かれます。

是枝:私は心配していません。今まで以上にチャレンジしていくだろうし、攻めすぎて失敗しなければいいなと思っているくらいです。

 今後、技術はどんどん進化しますし、制度も変わっていきますが、経営方針に立ち返ると、まだまだできていないこともたくさん見つかります。

 この会社は、経営者のマネジメントを支えるためにあります。すると、資金調達、生産性向上、売り上げアップ、新制度への対応など、様々なことに関わっていかなければなりません。

 税務ソフトや会計ソフトを売るだけでなく、税理士や会計士にはコンサルタントになってもらい、中小企業を変えていくくらいのことはしなくていけません。

 どうしたらそれができるかと言えば、やはり人です。人材を育てることも大事ですし、いい人材を採用することも大事です。育成の時間を買うためには提携や買収も必要です。

今、売り手市場で、採用する側には厳しい状況と言われます。

是枝:厳しいです。ですから一生懸命にいろいろな人に会って「いい人いませんか」と聞いています。世界で活躍できる人材を確保できれば、うちはSAPに比べるとまだ伸びる余地があります。社長にもそう言って発破を掛けています。ただ、経営会議と取締役会で会うくらいです。もう任せたのだから、私は外へ出て、関係づくりをしています。

次ページ 経営者は視点を高く設定すべき