知恵を絞り、上昇気流を見つけよう

 小平さんのことも同じです。私にとっては、たまたま縁があって、雇用しただけのことです。「この人は本当に活躍するのかな?」とか、「うんと頑張って、メダルをとれたら病院の名前が売れるな」なんてことはまったく考えていませんでした。
 このような偶然のチャンスはきっとたくさん転がっています。ただ、チャンスがあっても、前向きな考えができていなかったり、自分だけが良ければいいというエゴにとらわれていたりすると、そのチャンスは生かせないのだと思います。

 いま、地方は人口構造の大きな変化に直面しており、私たちも含め地方の企業や組織は大きな岐路に立たされています。これも、見方を変えれば、チャンスだと私は思っています。
 人口構造のトレンドが変わるということは、必ずそれまでにないチャンスが生まれます。そこには、必ずいままであまり気付くことのなかった新たなマーケットがあるはずです。ただし、それはこれまでの延長戦上では見つけられません。抜本的に頭を切り替えれば、絶対にチャンスはあるはずです。

 「上昇気流は、いつも必ずある。だけど、それがどこにあってどれくらいの強さなのかを見極めなければ、その上昇気流に乗ることはできない」
 これはある人から聞いた言葉なのですが、本当にその通りだと思います。社会が変われば、上昇気流の在り処が変わります。場所も強さも変わり、風もこれまでとは違う方向に吹くのかもしれません。だけど、必ずそれはどこかにあるのだろうと思います。
 だから、探さなければなりません。私たちには今まで蓄えてきたいろいろな経験によってつくられた知恵があるはずです。それを新たな方向に生かしていくことが大切です。人口が減ったら、若者が減って高齢者が増えたら、その社会にはどんなマーケットがあるのか。どんなことをしたら、みんなが生き生きと明るく暮らすことができるのか。考えていけば、やるべきことはたくさんあるのだと思っています。

 相澤病院の経営状況も、これまでずっと順調だったわけではありません。バブルの崩壊もあり、平成に入ってすぐのころは毎年3~4億円の赤字を出していて、周囲からは「あの病院はもうつぶれた」などと言われていました。
 そんな時期に私が院長になり、大変なことも多かったですが、一生懸命やっていると、助けてくれる人がいるものです。一緒に頑張ってくれるスタッフに恵まれたり、銀行出身で一緒に財務の立て直しに奮闘してくれたスタッフとの出会いがあったり、銀行に助けてもらったりして、今の相澤病院の発展があります。

 私は本当に幸せ者だと思っています。そうやって幸せをもらったからには、きちんと生かして、周りの人に良かったと思ってもらえるような経営や生き方をしていかなければなりません。それが、世の中に対する私の恩返しだと考えています。

(構成:尾越まり恵、この記事は「日経トップリーダー」経営者クラブMonthly2018年4月号の記事を再編集しました)