会社を買い取るに当たっては、取引先など周囲の方からも助けられたと伺っています。人付き合いではどのようなことを大事にしてこられましたか。

是枝:自分に特別な能力があるわけではありませんから、やっぱり人が財産です。企業理念を掲げるのは、目標を共有し、みんなで頑張ろうと思っているからです。「豊かな生活を実現させよう」という理念はまだ実現しているとは言えませんが、でも、そこを目指しています。

経営者自ら自社の価値を説明できるか

 当社がまさにそうでしたが、中小企業は外部からの影響も大きく受けます。

 私が買い取ってからのミロク情報サービスは、かつての親会社だったミロク経理とは資本関係がなくなっていましたが、世間は当社を子会社だと思っていました。このため86年にミロク経理が倒産したときにはその影響を大きく受け、経営危機に陥りました。根拠のない連鎖倒産の噂が広がり、売り上げが大きく落ち込み、銀行の融資もストップしました。

 このときに一番学んだのは、中小企業の経営者は、自社の価値をしっかりと認識し、説明できなくてはならないということです。

 当時、ミロク情報サービスの年商は約50億円で社員数は200人ほど。ただ、バランスシートに載らない技術力、営業力、ユーザー数があります。会社の危機を乗り越えるには、これらを自分たちで認識し、周りに理解してもらう必要がありました。

 財務諸表には反映されない当社の価値を理解してくださったのが、ミロク経理時代にオフコンのOEM(相手先ブランドによる生産)生産でお世話になったアルプス電気の片岡勝太郎社長(当時)です。私の話を聞いた片岡社長が金融機関に支援をお願いしてくださり、その結果、緊急融資を受けることができ、経営危機を乗り切ることができました。

 銀行に対しても、企業価値については説明しました。ただし、当時付き合いのあった6行のうち2行は手を引きましたね。

 この件に関してもそうですが、日本の金融機関は担保主義で、ビジネスを評価する目が養われていません。米国の企業と提携したときにそれを強く感じました。

 事業としてはうまくいきませんでしたが、タイム・シェアリング・サービスの会社を作ったことがあります。完全にフィフティ・フィフティですから、相手に日本では当たり前の連帯保証を求めたら拒否されました。「米国にはそんなルールはない」と言うんです。

 本当かなと思って、米国系銀行の東京事務所へビジネスプランを持ち込んでみました。米国の銀行が当社にどれだけ融資してくれるのか興味があったんです。すると「5000万円は貸せない」と言われました。融資は1億円からだというのです。ただ会社は当時赤字でしたが、それは関係ないとも言われました。問題はビジネスプラン、銀行の仕事はそこを見極めて企業を育てることだと言われました。個人保証も不要だと。これじゃ米国に勝てないと思いましたね(笑)。

 会社が倒産したら、経営者が自己破産するというのはやはりおかしい。日本でもようやく融資を受ける際の個人保証は外れ始めましたが、中小企業庁など政府はもっと考えてほしいと思っています。

(構成・片瀬京子)

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