アデランスはかつて米投資ファンドに株式を大量保有されて経営権を握られた。津村佳宏社長COOはその経験を振り返り、長期的視点で考えるオーナー経営には強さがあると話す。変化の時代だからこそ、短期的な利益ばかりを追わず、中長期の視点で経営を見直していくことに意味があるという。

 2004年以降、米投資ファンドのスティール・パートナーズに株式を大量保有され、長い間経営権も握られた。スティールは14年末まで30%の株式を保有していたが、その後売却し始め、15年9月に再び、プロパーで経営できる体制に戻った。そして1年。16年秋に創業者の根本信男会長と私が、国内投資会社のインテグラルと連携し、MBO(経営陣が参加する買収)を実施することを発表した。根本会長と私がMBOで51%の株式を持つというものだ。

<b>つむら・よしひろ </b>1963年8月生まれ。82年、アデランス入社。2009年6月、執行役員就任。13年5月、取締役就任。専務、副社長を経て、17年3月から現職(写真:的野弘路、以下同)
つむら・よしひろ 1963年8月生まれ。82年、アデランス入社。2009年6月、執行役員就任。13年5月、取締役就任。専務、副社長を経て、17年3月から現職(写真:的野弘路、以下同)

 山あり谷ありの10年余りだったが、こうなってみて改めて利益優先の短期経営の難点や長期で考えるオーナー経営の強さを感じている。16年2月期は、13年に買収した米国のかつら販売大手、ヘアクラブののれん償却や、国内でのGMS(総合スーパー)などへの積極出店による人件費増などで最終赤字となったが、売上高は791億5000万円で過去最高。業績は伸びつつあるが、MBOでもっと改革を進めたいと思っている。

 もちろん、我々に課題がなかったわけではない。かつて、良いものを作れば顧客は付いてくるとばかりに株価が低くなっても気にしていなかったといった面はある。利益を徹底的に重視する経営が大事なのは、その点からも分かる。

短期経営には問題があった

 しかし、短期経営にはやはり問題があったと思う。例えば、03年2月期に771億円に達した売上高は、08年秋のリーマン・ショック後に急落して12年2月期には474億円になった。リーマンの影響もあったが、それより経営に難題があった。
 例えば10年秋、社名を長年親しまれたアデランスからユニヘアーに変更した。イメージを一新したかったようだが、コストがかかる上に大事なブランドを毀損してしまった。さらにコスト削減のために、新潟県に置いていたR&D(研究開発)センターを廃止したり、11年には約400人の希望退職も募った。
 プロモーションにしても、女性用かつらやウィッグの主要顧客は60~70代の方なのに、そこに合わない方法を用いたりした。

次ページ オーナー型で変化に対応