でも実際にはそうならずに済んだ。

越智:きれいに始末をつけなければ死んでも死にきれません。最後にこれまで商売でお世話になった関西のデベロッパー、ヤマトーの藤原敏夫社長(当時)に会いに行ったのです。

 ヤマトーさんのお店で、うちの靴下を販売させてもらっていました。倒産したときに、債権者が押しかけて商品を持っていかれたらいけない。商品を引き揚げさせてもらうか、「債権者会議が終わるまで商品をちゃんと守ってほしい」とお願いしに行ったんです。

 今さら隠してもしょうがないからね。藤原社長には「借金がごっついありまんねん。あさって不渡りが出ます」と正直に話しました。

藤原社長は何と言ったのですか。

越智:藤原社長から「越智君、一体なんぼぐらい借金しとるんや」と聞かれたので、「合計で7000万円ありますねん」と話しました。

 そのとき藤原社長は驚いた顔でこう言ったんです。「なんやて。おまえ、やり手やのう」と。よもやそんなことを言われるとは思っていなかったのでびっくりしました。

 藤原社長は「俺は店を担保に入れて3億なんぼ借りるのが精いっぱいやった。おまえはどないして担保なしで7000万円も借りたんや。教えてくれ」と言うんです。

 この言葉で目の前の霧がパーッと晴れたような気がしました。「そうや。たとえ借金でも、これだけの金額を借りたわしはやり手や」と自分でも思えてきた。気づいたら「出直してきますわ」と金策に猛然と飛び出していましたわ。

 どんな局面でも人間は投げ出したらあきまへんな。「わしはやり手社長や」と思い込んだら何とかなるものです。無事お金を用立てることができ、不渡りを出すことなく、危機を突破しました。

紳士靴下専門店「Tabio MEN」阪急三番街店。「靴下屋」「Tabio」などのブランドで、フランチャイズを含めると全国に約300店舗を展開する

最悪という場合だって、必ずいいことがある

藤原社長の一言のおかげで、今の越智会長があるわけですね。

越智:そうです。藤原社長に「そうか、そんなに借りていたのか」と同情でもされたら、今頃どうなっていたか。きっと会社は潰れていたんじゃないかな。

 あのとき、言葉というのは大事やなと思いました。僕はできるなら藤原社長のような人間になりたい。もし友達が同じような相談に来たら、同情ではなく、藤原さんみたいな言葉をかけてあげたいなと思っています。同情というのはある程度、蔑みが含まれているように感じる。自分より立場が上の人に同情はしませんよね。