社員に設計技術を身に付けてもらうために大手企業に派遣しているとのことですが、その社員が派遣先に転職してしまうというケースがあるのではないですか。
梶村:それは本人にも取引先にとってもいいことですから、転職後も当社のファンでいてくれさえすればいいと、構わないことにしています。ファンでいてくれれば、その後も彼らとは仕事でつながります。確かに経営者仲間などからは、「そんなことでは全員奪われるぞ」と随分言われましたが、世の中はそんなに単純じゃないですよ。

新製品開発はマーケットインでないとダメ
派遣で経験を積んだ技術者が戻ってくると、自社製品作りに取り掛かるわけですね。
梶村:それが最初はほとんど失敗でした。この技術があるから、こんな商品ができるはずというプロダクトアウト型の商品開発に取り組んでいたのが敗因でした。新製品開発は、やはりマーケットインでないとダメなんですね。
今、医療・介護、農林漁業、建設土木など、日本国内でも根強い需要がある分野に絞って、その分野のお客様の困り事を探り、それを解決する製品作りを展開しています。医療・介護では地元の磐田市立総合病院、藤枝市立総合病院と、食や農業のジャンルでは農業者などと、また建設土木周りでは中日本高速道路(NEXCO中日本)グループと定期的な開発会議を持って彼らの困りごとを聞き、解決していく製品を開発しています。
例えば、NEXCO中日本グループとの会議を通して、除雪車がどこで何をしているかがリアルタイムで分かる車両位置情報システムを作ったのですが、同様のシステムが2018年までにほかの高速道路会社に入ります。このほかにも、従来品と比べ高性能で価格の安い、トンネル内の放送電波の受信状態を簡単に測定できる装置なども開発しています。
一朝一夕で潜在顧客と会議を持つことはできませんが、私たちはトヨタ自動車と「固有技術研究会」と呼ぶ開発会議に参加できていることが強みになっています。
トヨタ自動車には、当初根気強く提案して、会議を持たせてもらった後、実際に彼らに役立つ商品を開発できたことで良い関係を続けることができました。代表的な製品は、配電盤など端子の温度が異常に高くなったときに変色して知らせる安全備品です。彼らと共同で取得した特許も60件近くあります。
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