本題に戻りましょう。

 「社員の心を変えるには、何をしたらいいか?」

 私は、整頓を徹底します。なぜか?

 そもそも皆さんは、社員や部下に、どんな心を持ってほしいと考えているのでしょうか。ここが曖昧では教育の方針がブレます。

 私が何より求めるのは「素直な心」です。
 より具体的にいえば、「自分より結果を出している優秀な人がいたら、その人の仕事のやり方をそのままマネする」ことです。仕事で結果を出し、成長するには、このような「デキる人のマネ」が一番の早道です。しかし、素直に実行できる人は実に少ない。

 このような素直な行動の重要性を、社員に納得してもらうのに最良の方法が、整頓です。

整頓の極意は「形から入って、心に至る」

 なぜなら、整頓とは、先人たちが「モノをこう置けば、仕事がやりやすい」と実証したやり方を、そのままマネすることにほかならないからです。

 我が社は「文房具は向きをそろえて並べる」のが、整頓のルールです。
 慣れない新入社員にとっては、あまり気の進まない、嫌なことですが、上司が口やかましく言ううえに、できないと賞与が減るので、嫌々ながら、このルールを守るようになっていきます。
 すると、あるとき気づきます。「確かにペンの向きがそろっていると、サッと取り出せて便利だ」「だから仕事のスピードが上がる」と。こうして「上司や先輩の仕事のやり方をマネることには、確かにメリットがある」と、納得します。
 こうなれば、上司や先輩のほかの話にも耳を傾けます。素直な心を持って、上司や先輩の仕事のやり方を学びます。

 他人の勧めることを、嫌々ながらでもやってみる。

 これは、とても大事なことです。そこには、社会人として成長するための普遍のセオリーが隠されています。しかし、上司や先輩が勧める「やるべきこと」と「そのことをやるメリット」が、抽象的で分かりにくいと、部下や後輩は、その真理に気づいてくれません。

 だから、整頓です。整頓は、気の進まないことを「目に見える形で実践」することです。その結果として、「目に見えるメリット」が得られます。だから誰もが、「他人が勧めることを嫌々ながらでもやる意義」に気づきます。このセオリーを、お説教や訓話といった形で直接、社員の心に訴えても、社員の心は変わりません。一時の感動を得ても、すぐに元の木阿弥です。だから、日々の整理整頓というモノを介する形でしつこく働きかけ、社員の心を少しずつでも、確実に変えていきます。

 「形から入って心に至る」――これが、整頓を通じた人材教育の極意です。

(編集・構成:日経トップリーダー

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儲けの7割は「整頓」で決まる!
小山社長の持論です。株式会社武蔵野を率いて約30年。赤字会社を再建した後、中小企業630社以上を経営指導し、5社に1社が最高益達成。その経験に裏打ちされた信念です。

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上記のような武蔵野の現場の写真を豊富に掲載
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