ダスキンの加盟店業務の傍ら、中小企業の経営指導を630社以上手掛ける、武蔵野(東京都小金井市)の小山昇社長。徹底した現場主義で、人間心理に即した実践的な経営哲学と手法を説く。その持論にはときにアンチの声も聞かれるが、熱烈なファンが多くいる。
そんな小山社長が人材教育の軸に据えるのが、整理整頓。特に整頓だ。新刊の刊行に寄せて、小山社長が考える整理整頓のツボを、前後篇に分けてご紹介する。
うちの社員を性根から変えたい。部下の根性を叩き直したい。そう願ったことが一度もない社長や幹部は、まずいないでしょう。かくいう私も未だにときどき、そんな抑えきれない衝動に駆られます。
しかし、社長や幹部が取り組む「社員の心を変える人材教育」のほとんどが、失敗に終わります。
「ありがたいお話」では、社員は変わらない
その理由は、私の見るところ、社員の心を変えたいと強く願うあまり、社員の心に直接、訴えかけるからです。名経営者や名僧など、人格者と定評ある人物を研修に呼んで、みんなに「ありがたいお話」を聞かせる。あるいは、良書を読んで感動を語り合う。さらには、「心を一つに頑張ろう!」と皆で叫んで気勢を上げる。
その心意気は尊いですが、悲しいかな、効果は今ひとつです。抜本的な問題解決になりません。
人の心は不安定なものです。研修の直後には、やる気がみなぎっていた社員の「心の風船」も、帰宅後、奥さんにちょっと一言、嫌味を言われた瞬間、プシューッとしぼんでしまいます。これくらい安定しない心に対し、どんなに良い栄養を与えたところで、効果は長続きしません。
だから私は、社員の心に直接働きかける教育はまずしません。
形なき心ではなく、形あるモノに働きかけます。
その筆頭が、環境整備。特に整頓です。仕事に使うモノを所定の位置に、所定の置き方で戻す。まず、この1点に絞って徹底させます。

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