いろいろなご経験をされたことが、現在の取り組みに生かされていることがよく分かりました。話を知財に戻しまして、中小企業の多くは既に海外と取引していますが、その場合に特許を取ることの意味はどの辺りにある、と考えればいいのでしょうか。

知財を生かすも殺すも、ビジョン次第

鮫島:基本的なこととしてはまず、日本で取った特許は海外では使えません。ですから、グローバルで活動されている企業の場合は、各国で取らないといけない。だいたい今、1つの国で特許を取るには200万円ぐらいかかると言われています。もちろん、バラつきはあります。しかし、目安としては約200万円。

 ある特許を日本、米国、欧州、中国、インドの5カ国で出すとしたら、単純計算で約1000万円はかかります。即金で一気にかかるわけではありませんが、感覚的にはそのぐらいでしょう、という話はしています。

 1件だけ出願するのであれば負担にはならないでしょうが、10件あれば、それだけで1億円になります。大企業ならば問題ないかもしれませんが、中小の場合はその中からどれを選んで効率的に効果を出していくか、という選択をしないといけません。ですから、そこに我々が入って、特許明細書の品質を徹底的にブラッシュアップし、少ない申請数でも10件分の効果が出るようなアドバイスをしています。

 中小企業と言っても、年商10億円の会社から200億円、300億円と中堅規模の会社まであります。知財戦略というのは、会社の規模によっても大きく変わります。米国で訴訟を起こしたら、弁護士費用が約2億円はかかるでしょう。年商5億~10億円の企業が訴訟に2億円かけたら、たちまち潰れてしまいます。

 その際、どこまでのリスクを取れるかの判断基準になるのは、その会社にどれだけのビジョンがあるか、でしょう。今は日本だけでこの製品を販売しているけれど、ゆくゆくはグローバル展開を考えている。そのときに、おそらく中国ではこんな模倣品が出てくるだろうとか、米国にはこんなコンペティターがいるとか、事業計画に基づく知財戦略を投資家に説明できるか。重要なのは、そこだと思います。

(構成・曲沼美恵)

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