たとえメンバーの中で最下位であっても、やる気を持続させるためにはどうすればいいでしょうか。

:例えば箱根駅伝の場合、そもそも出場枠は10人です。50番目の選手が出られないのは当然です。かといって50番目の部員が悪くて1番目の選手がいいわけではありません。50番目の部員に対しては、50番目だと自覚しなさい。そこからどう頑張るか、その頑張りを私はちゃんと評価する、と伝えています。全員に、50番目のメンバーが悪いというようなことを絶対に言ってはダメだと厳しく言います。彼のポジションでどう頑張っているかを見てあげないといけないと。

 逆に、1番の部員には、たとえ常に1番だとしても、人として模範になれないようならそれは1番ではないと話しています。人としてどうあるべきかを追求しながら、他大学、もっと言えば世界と戦うために努力するのが役目です。こうした内容を、全体ミーティングで、繰り返し言葉にしています。

若者の意見を潰さない

選手たちは、監督が怒るツボを理解しているそうですが、どんなときに怒るのですか。

:まず、裏切ったときです。例えば、「勉強も練習も頑張ります」と言い続けて入部したのに、ついていけないから早々に辞めたいなどと言われると、まだ何も努力していないじゃないか、あの約束は何だったのかと怒ります。

 あとは言い訳です。出来ない言い訳をする前に、まずは平謝りでしょう。素直にごめんなさいと言える人材は強いです。伸びますよ。

 すべて共通するのは、自分の立ち位置や、陸上部の考え方など、基本となるものが、きちんと理解できているかどうかです。

選手が監督に対して自由に話せる雰囲気をつくっていく
選手が監督に対して自由に話せる雰囲気をつくっていく

ゆとり世代と言われる今の若者の活躍を促す秘訣は何でしょう。

:これまでの陸上界は、監督が絶対的な権力を持ち、上意下達の文化でした。試合までのスケジュールも監督の頭の中だけ。気が緩むからと選手に伝えなかったのです。時代も若者が育った環境も変わっています。今は、選手と同じ目線でレールを引き、同じベクトルを向くことが大切です。学生たちが走るのですから、1つのゴールに向かうとき、監督である自分と学生の考えていることが同じにならないと意味がありません。

 

 そして、自分の思いを監督に自由に言える雰囲気も必要です。管理職の皆さんに伝えたいのは、若者の意見を潰してはダメだということです。話せる雰囲気をつくっていかないと、組織は絶対にその管理者以上にはなりません。

(この記事は「日経トップリーダー」2016年2月号に掲載したものを再編集しました。構成:福島哉香)

日経トップリーダー3月号特集は「大和ハウス工業 創業者精神の飽くなき追求」
「日経トップリーダー」は、2016年3月号を発刊しました。特集記事は「『事業を通じて人を育てる』――大和ハウス工業 創業者精神の飽くなき追求」です。わずか18人で創業し、今や従業員数が6万人弱になった大和ハウスの成長の原動力は、創業者の石橋信夫氏が遺した精神の追求にあります。樋口武男会長兼CEO、大野直竹社長へのインタビューなどにより、その実像に迫っています。こちらをご覧ください。

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