
1967年広島県生まれ。県立世羅高校で全国高校駅伝準優勝、中京大学で全日本インカレ5000m3位。89年中国電力入社。陸上競技部に5年間在籍後、引退。以降、高額の省エネ空調機械をトップの成績で売り上げるなど“伝説の営業マン”として活躍した。2004年から現職。15年、16年の箱根駅伝などで青山学院大学を優勝に導く (写真:小野さやか、以下同)
青山学院大学にとって今年の箱根駅伝は昨年以上にプレッシャーが強かったのではないかと思います。どう跳ね除けてチームを勝利に導いたのでしょうか。
原:昨年10月に駅伝シーズンが始まると、日々プレッシャーを感じました。知らず知らずのうちに去年のチームと比較しては、「あれができない、これができない」と減点方式で見ていたと思います。
そんな中、箱根駅伝の前哨戦といわれる11月の全日本大学駅伝で東洋大学に敗れ、これはいかんなと反省しました。
本来、私は減点方式が大嫌いです。教育の基本は、加点方式なんです。昔はどうだった、あの人はこうだった、ではなく今のチームをどう強化していくか。残り2カ月だからこそ「これができた、あれができた」と前向きに評価しなければならないと原点に返りました。そして「準備とこだわり」をモットーに、積み重ねてきた練習に改めてこだわって、箱根に向かおうと呼びかけたのです。
試合はすべて準備の結果です。ですからしっかり準備した後は、仮に負けてもそれが実力と認めよう。そして、どんな順位に終わっても、笑顔でゴールしようと選手たちと約束していました。
選手と同じ目線に
駅伝はハードな競技ですから、これまでは真剣さや忍耐強さが強調されてきました。それを「わくわく大作戦」や「ハッピー大作戦」と、従来のイメージを一新するキャッチフレーズを使っています。
原:ある種おちゃらけたことを言っているように見えますが、1つの旗の下、皆が楽しく頑張ることができる雰囲気をつくる意図がありました。だから、我ながらなかなかいい案じゃないかと(笑)。
世間のプレッシャーは監督が一手に受けるもの。選手には重圧や緊張を感じさせたくなかったのです。試合前にそわそわ怒鳴り散らしても意味がありません。
それよりも選手たちを、走りたくて仕方ないという心の状態に持っていくことのほうが大切です。従来、陸上界では、上からの強いプレッシャーで頑張らせようとする風潮がありました。私はむしろ、いかにメンタル面を引き上げるかを、いつも考えています。これは、サラリーマン生活を経験したからこその考え方だと思います。
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