鮫島:特許というのは取って終わり、ではなく、維持コストもかかります。それをどうやってリソースに変えていくかという発想が常に求められる分野です。残念ながら、これまでは大企業・中堅企業しかそれができていませんでした。しかし、イノベーションが実際にどこから起こるかと言いますと圧倒的に中小企業からです。ですから我々としても、そこを支援していきたい。

特許を「どう使うか」を考えるのも戦略
日本には技術的には世界トップレベルの中小企業は多いのですが、知財戦略を含めた事業戦略が未熟なために、なかなか成功していません。そこを強化すれば、世界市場の7割ぐらいを取れるような会社はたくさんあると思うのですが、そういうポテンシャルを持つ会社が100社あるとしたら、今はその10分の1くらいしかそうなっていません。知財戦略を強化することでそれが50社くらいにまで増えたら、これはすごいことだと思いませんか。
最近、大学発ベンチャーが増えて、東大生の中でも一番のエリートが起業するケースもあります。彼らは若い上に頭が良く、センスもいいので、彼らと話している限り、知財に対する啓蒙はほとんど必要ありません。知財に対するテクニックを教えるだけでいい。
問題は、そういう若いベンチャーほど資金面での問題を抱えていることです。資金力のないベンチャー企業に対して、我々法律事務所がどのようなサービスを提供できるのかは非常に難しい問題です。米国のシリコンバレーでは、弁護士を雇うのによく(成功報酬として株式を受け取る)ストックオプションを使っていますが、個人的には、そうした考え方には抵抗があります。
ストックオプションにすると、目の前のクライアントをとにかく上場させる方向でアドバイスをしてしまう。バイアスがかかるのは良くないので、我々はこれまで極力、ストックオプションを受けるのは避けてきましたし、基本的なスタンスはこれからも変えないつもりです。(後編に続く)
(構成・曲沼美恵)

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