福祉事業を拡大されている中で、他社から訪問介護関連の事業を譲渡されているケースもあります。今のところ、福祉事業のマーケットは拡大しているにもかかわらず、譲渡するとは、やはり福祉事業には相当難しい面があるのですね。
依田:そうです。特に訪問介護がリスクだらけなんです。大企業が施設の事業に集中するのは理解できます。訪問介護の場合は、ヘルパー1人で自宅を訪問します。すると、金銭トラブルやハラスメントが起こる場合があります。このようなことを起こさないためには、従業員への教育研修が必要です。
今当社では、おむつ交換、入浴、ベッドから車椅子にお年寄りを移す“移乗動作”など、スタッフが学べる300の講座を用意していて、受けたい講座を受けてもらいます。ここで大切なのは、会社からのお仕着せではダメということです。従業員自ら学びたい、成長したいという気持ちに応えるために、多くの選べる講座を用意しているわけです。技能が上がると、10万円ほど年収が上がるという段位制度も設けました。
スタッフの心が痛むお年寄りからの言葉…
介護は人対人の仕事なので、お年寄りからスタッフに対して「あなたは全然できないね」などと言われると、スタッフの心は痛み、ストレスになります。
しかしそれを「大したことない」「何とかなる」と楽観的に受け止められるようになることも大切なんです。楽観は意思です。ですから“楽観的な社風”をつくり出す取り組みも様々実施しています。そのためのコーチング研修を創業当時から取り入れています。また自分一人で少しずつ自分を鍛えられる「楽観的思考ドリル」というオリジナルの教材も作りました。
一般的な会社の教育研修は、メニューの完成がゴールという面があるのではないでしょうか。しかし私たちは塾をやっていましたので、成果が上がらないとゴールではないと考えています。成果を上げるには、強制的に講座を受けさせないことです。

(後編に続く。後編の掲載は2月16日の予定です。構成:片瀬京子、編集:日経BP総研 中小企業経営研究所)
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