そうした人生観はいつ養ったものですか。

山西:70年前です。海軍の潜水艦「伊400型」の乗組員として終戦を迎え、原爆投下で焼け野原になっていた広島に帰りました。どうやって生きていこうかと考えた時、干し柿を作っている潜水艦の仲間がいることを思い出し、それを買ってヤミ市の露店で売りました。

 お金がなくて地下足袋や花嫁衣装を手に「干し柿と交換して」という人も来ました。交換すると涙を流して喜んでくれてね。相手に喜んでもらえればこちらも嬉しい。そういう体験が今の商売を営む原点になっています。

スーパーという商売は、まだまだ深掘りできる

高齢化、人口減少など国内市場は暗い話題が多い。インターネット通販の普及も、店舗を構える小売業にとっては逆風です。それでも成長のチャンスがあると考えますか。

山西:お客様が憩い、楽しめる場を我々がどれだけ提供できるかだと思います。インターネット通販が好きな人もいるでしょうけれど、家族や友達と店に行きたい人もいますから。私は今も週2回、お客様の立場で各店を見て回り、楽しい雰囲気の店か、クルマに乗って出向く価値のある店かとチェックしています。

 反省しなくてはいけない面もあります。実は我々が2015年6月、広島県廿日市市にオープンしたゆめタウンは飲食部門のスペースが少なかった。寿司屋、うなぎ屋、天ぷら屋などレストランを17店舗入れたのですが、お昼にはお客様が外でずらっとお待ちです。それだけまだ店に行き、憩い、楽しもうとする需要があるということです。

 国内での成長は望めないと海外に進出する企業もあるけれど、ライバル企業より魅力的なものを提供し地域の占有率を高めようと思えば、まだ足もとでできることはたくさんあります。イズミは新しいことをあれこれ追いかけるのではなく、今の商売を深掘りしたい。その上で2020年に1兆円の売上高を達成するのが目標です。

90歳を超えてなお現役経営者である山西会長から後輩の経営者たちへのアドバイスはありますか。

山西:私は「革新」「挑戦」「スピード」をモットーにやってきました。衣類卸からスーパーに転じたのも、GMSを手掛けたのも挑戦です。失敗もしましたが、挑んでいなければ今のイズミはないでしょう。

 経営者はどんどん挑戦することです。失敗を恐れず、やってみて、間違いと分かればすぐに改めればいい。年を取ると保守的になる。若いうちは革新を狙って無茶をやるのもいいと思いますよ。

(構成・小林佳代)

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