設立2年目の1963年、大阪に大型スーパーを開店しますが、わずか半年で撤退していますね。

山西:今思えば、大阪出店は無謀でした。衣料卸からスーパー事業に乗り出したばかりで、まだ広島市内に2店舗しかない時に3店目を大阪に出してしまった。出してみて、戦線を拡張し過ぎたと気付き、撤退を決めました。

 店を閉める時には、地元で採用した人には辞めてもらうなど不名誉な後始末をたくさんしなくてはなりません。「ようやらん」という人も多いけれど、大事なのはそれをぱっとやることですよ。出て行く勇気以上に撤退する勇気を持つことです。

 大阪での経験から、私はとにかく目の前の地域を一つひとつ固めることに専念するようになりました。広島を中心に瀬戸内海地域で一番を目指し、それができたら中国地方の一番を目指し、九州へ進出し……。こうして一歩一歩進んで今に至りました。

1961年に広島市の繁華街に出店したスーパーいづみ第1号店(右)と15年6月に広島県廿日市市にオープンした「ゆめタウン」
1961年に広島市の繁華街に出店したスーパーいづみ第1号店(右)と15年6月に広島県廿日市市にオープンした「ゆめタウン」

従業員に報いれば、彼らの感謝がお客様の喜びになる

店舗網拡大のため積極的にM&A(合併・買収)も進めました。どのように従業員をまとめましたか。

山西:買収するのは、業績が悪い企業。だから、例えば従業員はボーナスを受け取っていないことが多いんです。我々は買収直後から、正月と盆に2カ月分のボーナスを出すようにします。その次には、とにかく店の中身を良くして業績を伸ばし、2.5カ月分のボーナスを出すという具合に少しずつ増やす。2003年に買収したニコニコ堂(熊本市)は今、4カ月分のボーナスを出しています。

 こうやって還元すると、従業員は感謝の気持ちを働きに転化します。するとお客様が喜んで来てくれる。お客様の喜びは売り上げに反映します。業績が向上すれば株価が上がる。好循環ですよ。

 といっても、打算的にやっているわけではありません。「人を喜ばせたら、その喜びは自分に返る」というのが私の人生観なのです。

 喜んでもらいたいから、個人的に従業員に対し誕生日祝いを贈ることも習慣にしています。日持ちのする菓子が多いですね。子会社を含めて対象は2万人ほど。買収した場合は、契約を調印した月から渡します。それで業績につながるかどうかは分からないけど、喜んでくれることは確かですよ。

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