学生や転職者にとって魅力的な企業に見せる手法を、企業の「採用ブランディング」という。ブランド戦略のコンサルタント、スターブランド社の共同経営者・フロントマン、村尾隆介氏は、今中小企業にとってこの採用ブランディングが最も重要と主張する。多くの中小企業が危機的な人材不足に悩まされているからだ。村尾氏は2年の試験期間を経て、中小企業が大きな成果を出せる採用ブランディングの手法を編み出した。採用シーズンに入る前に、実例を交えながらその意義と手法を披露してもらった。
村尾さんは、中小企業のブランドづくりに力を入れていますが、中小企業の採用に効く「採用ブランディング」の手法も確立したとのことで、今日はそれについて紹介してもらおうと思っています。
村尾:はい。2年をかけて幾つかの中小企業に対して採用ブランディングを試みたところ、大きな成果を得ました。
ブランドというと、会社全体のブランド、商品やサービスのブランドなどさまざまですが、採用ブランディングは、学生や転職者に対してより魅力的な会社に映るようにすることです。ありのままを見せたら、正直まずい会社もたくさんあります。そこを、整えていきます。
採用ブランディングでは、学生が見たい部分がどこなのか、という視点が重要です。例えば、学生が見たいと思っているのは、その会社の社員がお昼ご飯をどんなところで食べているか、繁忙期はどれぐらい忙しいのかなどです。

具体的に中小企業は、どのようにして採用ブランディングを進めていけばいいのでしょうか。
村尾:まず、会社の各部署から、採用を担当する5~7人のメンバーを選出してもらいます。各部署の入社1~5年目の若手社員を中心に構成します。ここが重要です。リクルートチームは主に、合同企業説明会や就職セミナーでのプレゼンテーションを担当しますが、このプレゼンを徹底的に鍛えるのです。
合同企業説明会で、入るつもりはなかったが、時間が余ったのでたまたまそのブースに寄ってみたという学生が、自分たちより“少しだけ先輩の若い社員”たちが、かっこ良くプレゼンするのを見て、「すごいな!この会社」と言ってエントリーシートを出すことはよくあるんです。他の会社から既に内定を受けているけれど、友だちの付き合いで来てみたら、すごくかっこ良かったので、内定を蹴って入社を決めたという学生もいます。
200人強の規模で約20人の新卒社員を採用
採用ブランディングを実施して成果を得た、企業の実例を紹介してください。
村尾:タカヤ(岩手県盛岡市)という建築会社は従業員規模で200人強の会社ですが、リクルートチームをつくってプレゼンを強化したことで、2017年度に17人の日本人と2人の外国人を採用することができました。はじめはPowerPointを見たことも触ったこともないという状態から、3~4カ月ぐらい一生懸命練習を繰り返すことで、皆さん大変成長しましたのです。

合同企業説明会や就職セミナーでリクルートチームがプレゼンで頑張る以外にも、採用ブランディングのために取り組めることはあるのでしょうか。
村尾:はい。合同企業説明会や就職セミナーの会場で使う制作物、「ツール」も大切です。就職セミナーなどに参加すると、たいてい一区画3m×3mのブースを借りることになります。何もしなければ壁は灰色で、普通の椅子と机が置いてあるだけです。採用活動で「グレーは禁止」です。グレーは疲れたイメージがあり、学生が憧れる「かっこいい大人」の反対のイメージを与えてしまいます。
細かいようですが、代表的なツールは椅子カバーです。社名が大きく入った基調色(コーポレートカラー)のカバーを取り付けると、それだけでブースのイメージは随分変わります。ブースのフロアの色を変える演出も効果的です。基調色のタイルカーペットを3m区画に敷くと、その区画だけ目立ちます。
エントリーシートや、学生に渡す際のクリアファイルなどのノベルティーを基調色にすることもあります。リクルートチームの名刺やIDカードもそろえます。プレゼンをする際は、男性は基調色のネクタイ、女性は基調色のスカーフを巻くなどして統一感を出します。
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