リアルイベントもデータと無縁でいられない

ビッグデータとしての利用も考えていますか。

江草:どちらかというと、スモールデータを意識しています。ビッグデータは、資本力のある、大きな企業が持つものだと思っています。私たちはそういったデータを買うこともできますし、オープン化されているデータを使うこともできます。

 一方で弊社が持っているのは、年間1400件ほどのオーダーメードのプロモーションやイベントに関する、他の企業が持ち得ないデータです。数はたった1400ですが、これをビッグデータと掛け合わせたクロス集計をすることで「このプロモーションにはこんな可能性がありそうだ」という傾向が見えてきます。

 イベントやプロモーションの業界はどちらかというとデータとは縁遠い世界なのです。盛り上がったとか大勢の人が集まったとか、定性的に評価されることが多い。定量的なデータがあったとしても、アナログなアンケートの結果などがほとんどです。

 このため、イベントの効果に対して具体的なKPI(重要業績評価指標)が設定されることも少ないのが現状です。しかし今、デジタルがこれだけ進化してリアルとの相性も良くなってくると、リアルの方だけがデータと無縁というわけにはいかなくなると思っています。そういった数字をはっきりさせたい、成果を見える化したい。そしてデータをマーケティングに生かしていきたいと考えています。

TOWでは、リアルなイベントを即、SNSで発信できるイベント等、デジタルを組み合わせたプロモーションの提案が受け入れられているという。写真は、同社のユニット「TOWAC」が開発した「シェアガチャ」。参加者がイベントの様子をSNSで発信すると、プレゼントがもらえるマシン
TOWでは、リアルなイベントを即、SNSで発信できるイベント等、デジタルを組み合わせたプロモーションの提案が受け入れられているという。写真は、同社のユニット「TOWAC」が開発した「シェアガチャ」。参加者がイベントの様子をSNSで発信すると、プレゼントがもらえるマシン

2020年には、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会という大きなスポーツイベントが控えています。

江草:そうですね。ただ、当社としては2020年をゴールにはしたくないと考えています。イベントを生業にする弊社の場合、2020年に一大ビッグイベントがあるから人が必要だと、そのときのために100人も200人も社員を増やしたら、それが終わった後、その先は何の仕事をするのかということになります。

 大事なのは、オリンピック・パラリンピックに触れることで、人々がどのように変わっていくかを捉えることだと考えています。テクノロジーの進化により、例えば動画の新しい見方、スポーツの観戦方法も新たに開発されるでしょうし、街の看板の多くがデジタルサイネージに変わるようなことがあればプロモーションの方法も変わります。

 2020年以降には、プロモーションの世界で新しいテクノロジー、コミュニケーションの方法が根付き、私たちは人々に新しい体験を提供できるようになっているはずです。

 私たちはこれをどうリードしていけるかについて、よく考える必要があります。ピークを2020年に持っていくのではなく、近くても2025年くらいまでの事業ストーリーを考えておく必要があると思っています。数年後の事業ビジョンとしては、データを活用しながら、今までにない“ブランド体験”を多くの方にしていただきたいと思っています。

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