共振の経営という表現は、2001年の社長就任当初から用いていたのですか。

高原:意識して使い始めたのは2008年くらいからだったと思います。共振の経営を実践するために、ユニ・チャームでは2つの仕組みを取り入れています。

 1つは週次でPDCAサイクルを回す「SAPS経営モデル」(SAPSはサップスと読み、Schedule、Action、Performance、Scheduleの略)。もう1つはトヨタ生産方式を参考にした、ものづくり現場を中心とする改善活動「UTMSS」(Unicharm Total Management Strategic System、通称アトムス)です。

 最初はひとくくりにして、「SAPS経営」と言っていました。しかし、それでは分かりにくかったので、共振の経営という呼び方に改めたのです。

自分1人で意識を変えることはなかなかできない

 人間は、自分1人では意識をなかなか変えることができません。できないから、多くの人が悩むのです。だったら意識より先に行動を変えれば、意識が後から変わるのではないか。そう考えて、先代(父で創業者の高原慶一朗氏)のときから続くUTMSSに加え、私が社長に就任した後、社員の行動変革を促すSAPS経営モデルを導入しました。

高原社長は「意識を先に変えようとすると難しい。行動を先に変えれば意識が後から変わる」と話す
高原社長は「意識を先に変えようとすると難しい。行動を先に変えれば意識が後から変わる」と話す
 

 SAPS経営モデルのイメージは、野球に例えると分かりやすいと思います。素人に「試合では常にホームランを意識して狙え」と指示しても、無理だと思ってやる気がなくなるかもしれません。反対に「バットの素振りを毎日100回やりなさい」とアドバイスすれば、やる気さえあれば誰でもできる。毎日続けてから試合に出れば、ホームランが打てる可能性は十分あります。

 

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