「全然、心を打つものがなくてダメ出ししちゃいました(笑)」
戸倉:僕はずっと、「since」という言葉を使うのはやめなさいと言っているのです。過去の歴史にとらわれるのではなく「今」を変えることによって将来は変わっていく。立ち止まらないし新しいことに挑戦し続ける。その意味で「BETTER STARTS NOW」は、まさにブランディングのベースになる考え方なのです。
川島:老舗の経営トップのお話を聞いていると、土台として変えないところと、時代に合わせて変えなければならないところがあるという話をよく耳にします。
戸倉:変えてはいけないところについては、「シチズングループ行動憲章」として定めています。これは、シチズングループの企業理念を具現化する行動や判断の基準となるもの。ここを土台に据え、思いっきり自由闊達にやっていくことが大事と思っていて。実はそのひとつが「未来プロジェクト」というものなのです。
川島:へえ、面白そうですね。
戸倉:たとえば100年後を想定した時に、時計って、時間って何なんだろうということを考えてみたらどうなるのか。そんなところから始めたプロジェクトで、部門を越えた若手社員が集いチームを組んで、自由にやらせているのです。それでこの前、最初のレポートができてきたのですが、全然、心を打つものがなくてダメ出ししちゃいました(笑)。
川島:厳しい社長だなあ。
戸倉:過去からの積み上げでしかないのがもったいなくて。将来って、誰もわからないことじゃないですか。わからないのだったら、うんと面白いことを考え、言っていいと感じたのです。
たとえば時間というものは、ある時は長く感じるし、ある時は短く感じる。嬉しい時の時間ってどうなんだろう、悲しい時の時間ってどうなんだろう。そういったことを、どう商品につなげていけるのだろう。いろいろな発想を自由に飛ばしてみたらいいと思うのです。
そのためには、自分の分野の仕事だけでなく、もっと外を見て、違う分野の人と会って、世の中の「多様性」に触れることが大事。だから、これからの「未来プロジェクト」を、とても楽しみにしているのです。
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