「作る人」と「使う人」をつなぐのが「売る人」の役割

川島:釜浅商店に並んでいるものを見ると、昔ながらの調理器具に混じって、オリジナルのものもありますが。

熊澤:そうなんです。メーカーさんにお願いして一緒に作ったもので、うちでは前からやってきたことです。釜飯の器ってあるじゃないですか? 木の台に収まっている小さな釜、あれって僕の祖父にあたる2代目が発案したものなんですよ。ある料理長と話していて「こんなものがあったらいいのでは」と思いついて、メーカーさんに頼んで作ったそうです。

川島:4代目を担う熊澤さんは、どんなものを作ってきたのですか?

熊澤:打ち出しの鉄のフライパンは、そのひとつです。一枚の鉄の板を叩いて作ったフライパンなのですが、取っ手の部分に工夫を施しました。従来の商品はビスで留めていたのですが、洗う時にその出っ張りが邪魔なので、ビス留めをやめて溶接にし、内側に突起物がないようにしたのです。

 それと、普通のフライパンって、蓋をすると取っ手が付いている部分がぶつかって、少し隙間ができちゃうじゃないですか。あれをなくすために、取っ手の位置を少し下げて、蓋がぴったりはまるようにしました。それからうちでは、表面が錆びつかないように、一枚一枚油を塗って、蝋引きの紙に包んで販売しています。

川島:良いものを作って、手間暇をかけて店頭に置いているのですね。でも、そうやって、使い勝手を配慮した造りになっていると聞くと、さらに商品がよく見えてきます。

熊澤:そこも含めて伝え、売っていくのが、釜浅商店の仕事というわけです。うちの中では定番でヒットしている商品のひとつです。

川島:使い手のことを考え、メーカーさんに提案して、良い料理道具を作っていくのも、釜浅商店が果たしている役割のひとつなんですね。

熊澤:そうです。うちの仕事は、「作る人=メーカー」と「使う人=お客さん」をつないで「売る」ことにある。作り手からも使い手からも信頼される立場にいなくてはならないし、そうなろうと思っています。

 言い換えれば、「作る人」「売る人」「使う人」、三者を結び付けて輪を作ることであり、当然、使い手が求めているものを作り手に伝え、作ってもらう仕事も、僕たちが担う役割。それは、創業当初から変わらず続けてきたことでもあります。

川島:なるほど、そう言われると腑に落ちます。「良理道具」というブランドコンセプトは、今に始まったことではなく、昔から釜浅商店の土台をなしてきた考えだった。熊澤さんが西澤さんの助けを借りてブランディングを図ることで、それが明快になったということですね。さて、そうやって進めてきたブランディング、業績に反映されてきていますか?

熊澤:おかげさまで、今年は前年比で2割ほどアップの業績になりそうです。そうやって、結果が出てくると、従業員たちのやる気が高まってきて有り難いです。

川島:海外での展開も含め、これからのお仕事の広がり、楽しみにしています。今日はありがとうございました。