川島:社長になったのはいつですか?

熊澤:2004年、30歳の時です。ところが、その頃うちは、あまり良くない状況に向かっていて、このまま行くと「先はないかも」と感じていました。

川島:どういういうことですか。

熊澤:飲食業界の景気が良くなくて、需要が明らかに落ちていたのです。それに、うちは1989年、本社ビルの建て替えをしているのですが、その時の借入金が経営を圧迫していました。

川島:社長になっていきなりですか?

熊澤:そうなんです(笑)。ただ僕は、一般の方々で合羽橋を訪れる人が増えているのを見ていて、打開策のひとつとして「これも大切にしないと」と思ってもいたのです。他の店の大半は「素人は邪魔」的な感覚で、お客さんと見ていなかったんですけど。

川島:BtoBではなくBtoCの可能性を感じていたということですね。

熊澤:そうです。だから2004年、広尾支店を開き、外国の方も含めた一般のお客さんを狙おうとしたのです。ただそれも、2008年にリーマンショックが起き、一気にお客さんが減ってしまった。まさに八方塞がりの状態に陥ってしまいました。

川島:それは大問題! で、どうされたんですか?

熊澤:何とか立て直そうと悩みました。そんな中、ホームページを新しくしようと思い、知り合いの紹介で、エイトブランディングデザインの西澤明洋さんにお会いしたんです。

 西澤さんは「COEDO BEER」などのブランディングを手がけた方で、悩み事をもろもろお話したところ、「釜浅商店としてブランディングをしないといけないですね」言われたのです。そこから西澤さんと一緒に、釜浅商店としてのブランド作りが始まりました。

「何が大切かを見究め、際立たせることが大事」

川島:ブランディングと一言で言っても、幅も奥行きも広い仕事です。まず何から始めたのですか。

熊澤:「情報整理」からです。「何が大切かを見究め、際立たせることが大事」と言われ、西澤さんと話し合いを重ねました。その過程を通じ、少しずつブランディングということがわかってきました。今、振り返ると、西澤さんというプロの導き手がいたからこそ、釜浅商店というブランドについて、真剣に考えることができたと思っています。

川島:「何が大切かを見究め、際立たせる」って大切なことですね。老舗に限らず長いことやってきた企業は、ともすると「情報整理」って忘れがちなものですから。それで結局、どこに行き着いたのですか?

熊澤:「良い道具には、良い理がある」ということで「良理道具」という言葉をブランドコンセプトに据えました。うちが目指していくことはこれだ!と思ったのです。

川島:良い道具と言われるには、それだけの理由があるということですね。