デザイナーは30~40%の力でデザインするくらいがちょうどいい

川島:クリエイティブディレクターを務めた柳原さんのお話をうかがってみたいと思います。どのような観点で16組のデザイナーを選ばれたのですか?

(Teruhiro Yanagihara Art Director 2016 Project Photography Kenta Hasegawa)

柳原:私利私欲じゃなくて、このプロジェクトの意図に賛同して本気で取り組んでくれるかどうか、僕なりに吟味してお願いしたのです。

川島:発表したものは、日本に限らず欧米の暮らしに溶け込みそうな顔つきになっています。

柳原:発表された作品群は、デザイナーの力によって、産地の技術力を半歩も一歩も先に進めたものばかりです。デザイナーが「こんなものを作りたい」と提案すると、参加企業は、まず怖気づくわけです(笑)。ただ、デザイナーも無鉄砲に言っているわけじゃない。有田に行って、最短で2週間、長い人は1カ月くらい、現地で暮らしてもらっているのですから。「こういったものならできる」という前提で、それぞれが提案している。だから、参加企業が、ちょっと無理してやってみると、こうやってできあがっていく。引っ張り出せば、技術力はどんどん上がっていくことがよくわかりました。

川島:その時に、有田焼という伝統や“らしさ”も大事にしなくちゃいけませんよね。

柳原:もちろんです。そのために、僕をはじめ、デザイナーたちは、有田焼の歴史やアーカイブを徹底して学びました。伝統の中に存在している様式というものは、きちんと守らなければならない。そうでなければ、有田焼の独自性や個性といったものの存在意義はないわけですから。「守ること」と「攻めること」の双方が必要だと思うのです。その意味では、今年が有田焼創業400年だとすれば、これからさらに400年の歴史を作っていこうという意気込みで、「2016/ project」に取り組みました。

川島:このプロジェクトを取材していて、クリエイティブディレクターとしての柳原さんのかかわり方も興味深かったです。いわゆる「先生」でなく、上手に伴走されているなって。

柳原:デザイナーが100%の力を出すのではなく、30~40%の力でデザインするくらいがちょうどいいんです。

川島:30~40%ですか?

柳原:こういったプロジェクトは、デザイナーの思い込みに陥ることなく、技術の確かさを土台に、ユーザーを視野に入れたブランド作りに徹することが大事だと思ってきました。だから、参加してもらった15組のデザイナーたちに、そのあたりをお願いして進めてきたのです。参加企業の方は最初、もっと僕がやってくれると思っていたみたいですが(笑)。それじゃ、最終的に地元の産業が自立していかないですから。

川島:400周年の記念イベントだけでは終わらせないということですね。

柳原:その意味では「2016/ project」に留まることなく、新しいものが次々に生まれていって欲しいと思っています。有田がモノ作りのプラットフォームとなり、世界のクリエイターが訪れたいと思う町になって欲しい。2016年6月~11月には、有田で本格的なアーティストレジデンスが始動します。オランダから2組のアーティストとデザイナーがレジデンスに滞在し、窯元と一緒に制作を行っていく予定です。さまざまなワークショップを、やっていこうという構想もあります。そういうサポート組織を作っていくことが、結果的に地方のモノ作りを支えていくのではないでしょうか。