(前回の記事から読む 対談収録:2015年12月7日)
ネット時代にリアル店舗の持つ意味は?
川島:買い物の場がネットに移っていく中、リアルな店舗の持つ意味は、どうなっていくと思われますか?

大西:これからのリアル店舗は、「環境・空間=空気感」と「コンテンツ」の組み合わせになっていくと考えています。
増田:お客さんが本当に行きたいと思う「空間」「サービス」「商法」「出会い」…そういうものがないと、わざわざ店に足を運んでくれなくなってきます。だから、チェーンオペレーションではなく、店によってオペレーションを変えていかなければならないと、僕は考えているのです。
川島:チェーンオペレーションでないとなると、Tポイントカードのようなビッグデータはどう使っていけばいいのですか?
増田:そこは、うちがフランチャイズビジネスで培ってきたノウハウが生きるところ。データベースのインフラの上で個別のオペレーションをしたり、物流インフラがしっかりしている中で個店経営をしていくことです。たとえば、大型チェーンであっても、その店の店長さんや売り場に立っている人が、「工場で今、生産されているものは何なのか」、あるいは「この商品の先週の売れ行きはどうだったのか」という情報を手に入れることができる環境で、個店経営を図っていくことが、これからの小売りのあるべき姿だと思うのです。
大西:それから、これも増田さんと意見が一致したことのひとつですが、小売業に求められているのは「編集」の視点であって、百貨店は新しい「分類」を作っていかなければならない。「分類作り」は、これからのキーになってくると思います。
川島:具体的にどういうものになるのでしょうか?
大西:現在の百貨店、いや、小売業の多くは、「紳士」「婦人」「食品」といった商品カテゴリーによる分類をしているのですが、新しい分類が必要だと思っているのです。
増田:うちは今度、代官山蔦屋書店と同じくらいの規模で「世界一のアートの本屋」を作ろうとしているのですが、大西さんがおっしゃった「分類」は、その店を作るにあたっても、とても大事な要素になっています。さらに踏み込んで言えば、分類を変えるにあたっては、「今シーズンのスカートだったら、このデザインが良くて、あのデザインは違う」といった目利きの存在が必要なのです。専門分野のことを徹底して知っている目利きの力量が問われるところです。
川島:でも目利きって簡単に育つものではないですよね。
増田:だから、三越伊勢丹さんと組むんですよ(笑)。
川島:では大西さんに質問!三越伊勢丹には、目利きの方はたくさんいらっしゃいますか?
大西:いることはいるのですが、あくまで「自分の担当カテゴリーの中での目利き」なんです。これから必要とされるのは、もっと広い目利きじゃないといけないのですが…。
川島:どちらの社長も、社内の目利きをもっと養成していかなければならないということですね。社員が刺激し合って成長していったらいいですね。
大西:それを期待しています。
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