変化していくという前提で歴史を生きる姿勢

川島:それってどうやって見つければいいんですか?

大西:その人にとって、見たことがないとか、ハッとすることって大事だし、さっき増田さんがおっしゃっていた「ワオ!」という感じを探すことですね。

増田:たとえば、虎屋さんの羊羹を、お中元とかお歳暮に贈りたいと思っていて、良いものとわかっているけれど、結構高い。でも、そういう憧れみたいなものに向かう過程って凄く楽しい。ワクワクするじゃないですか。

 それで、人さまにも贈るけれども、ついでにがんばった自分にもご褒美を贈る。「虎屋の羊羹をお茶菓子にできるようになった」という感じ。そういうのも、ある種の生活提案だと思うのです。あるいは、ファミリーマートのスイーツを、彼女のマンションで食べるのも、いいですよね(笑)

川島:以前、糸井重里さんと対談した時に、「面白さって何ですか?」って聞いたら、「意外性と共感性が一緒にあることなんです」と言われて納得したのです。「意外性」には「ワオ!」という驚きがあっていいのですが、そればかりだと疲れてしまう。だから「共感性」というものもあって欲しいなと思います。

大西:なるほど。自分の内面に持っているテイストにフィットする「共感性」を持ちつつ、それまで自分が感じたことがない「意外性」があるということですね。共感ばかりしていると、驚きはなかなか感じられませんから。たとえば新宿店全館を「ワオ!」で埋めつくしたら、ビジネスとしても成り立たないし、バランスが悪いわけです。

川島:お客さんもアップアップしちゃいます。

増田:それは僕も同感!今の時代って、スマホで何でも買えちゃうじゃない?そんな時代にリアルな店舗で小売業をやるというのは、どういうことなのかはよく考えなくてはならない。手法としてのデータベース・マーケティングは有用だと僕は思っているのです。

 それと、これから小売業は限りなくメーカーに近づいていく。すべて自社でやるわけですから、ネットの影響を受けにくいわけです。つまり、ユニクロさんのように「自分で作って、自分で売る」ビジネスは、ひとつの強みになっていくでしょうね。何しろ、すべて自社でやるわけですから、ネットの影響は受けにくい。

川島:売る方から作る方に、踏み込んでいくということですね。そのあたり、大西さんはどうお考えですか?

大西:そういった事例は、当社でも出始めています。たとえば、浅草の靴の工場と組んで、婦人靴のオリジナルブランドを立ち上げたのですが、新宿店の国産ブランドの中で、一番売れるものに育ってきていますし、レディースパンツでも似たような成果が出てきているので、もっと増やしたいと考えています。

川島:凄い成果ですね。

大西:ただ、当社はお客様に一番近いところにいるわけですから、当たり前のことをやっているだけ。お客様にとって価値と価格のバランスが良いものを提供できるし、コストを抑えて利益を残すこともできるわけです。最初から最後まで自分たちでやらなければならないので、それなりに手間隙はかかりますし、在庫リスクも負うわけですが、ニーズをつかんできちんとモノ作りしていけば、成果は出るということです。

川島:そこまで踏み込んでやっていかなければいけないのでしょうか。
大西:生き残っていくためにはマストです。歴史や伝統といった価値も大切ですが、京都で200年300年と生き残ってきた老舗は、生業をずっと続けてきたかというと、そうではないところもたくさんあるわけです。だから当社も、変化していくという前提で、歴史を生きる姿勢を持ち続けなければ、百貨店として、いや、小売業として生き残っていけないのです。