三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹)とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が、協業して新しいことを始めるという。かたや歴史ある百貨店である三越伊勢丹、かたや「蔦屋家電」をはじめ、新しい業態を切り拓いてきたCCC。ともに創っていくビジネスは何なのか、強烈な好奇心が湧いてくる。

 三越伊勢丹を率いる大西洋社長とCCCを率いる増田宗昭社長とは、何度か個別にお話をうかがっていて、強いリーダーシップで途を切り開いてきた経営者という点で、よく似ている。大西さんは、歴史ある百貨店という業態を、未来に向けて変えなければという意思のもと、数々の改革を断行してきた。紳士的で鷹揚な方なのに、自社の有り様に話が及ぶと過激なくらいの厳しさを見せる。

 一方、増田さんはエネルギーの塊みたいな方。お会いすると、物凄い勢いで「今やりたいこと」を語り始める。従来の枠組みを壊したり、越えたりというぶっ飛んだアイデアばかりだが、語り口は自信にあふれている。

 そんなお二人が事を興すのだから、面白くならないはずはない。突っ込んだ話を聞きたいとお願いしたところ、快く引き受けていただいた上に、公開対談にしても良いという。しかも、両者が若手の社員をたくさん連れていらっしゃった。若い力に期待する思いを感じる一方で、経営トップの意図が伝わることはなかなか難しいのだろうと思いが及んだ。

 代官山 蔦屋書店の「Anjin」にて、大西さんと増田さん、少し「マッチョ」なトップがぶつかり合って、熱気あふれるトークが繰り広げられた。
(2015年12月7日収録)

中間管理職は若い人の邪魔をしなければいい

川島:今日は、元気の良い企業を率いるお二人の対談ということで、少し緊張しています。それで、最初は少し柔らかいお話から聞いてみたいと思いますが…。今日の装いのポイントは、それぞれどんなところに置かれているのでしょうか。

(写真:長島 大三朗、以下同)
(写真:長島 大三朗、以下同)

大西:そこからですか(笑)。今日は、こういう場でお話させていただくということで、靴は少しこだわりました。人さまの前に出る時に履く靴というのを、だいたい決めているので、その中から選んだのです。

川島:鮮やかな茶色が印象的な靴を履いていらっしゃいます。一方で増田さんは、シックなジャケットをお召しですが。

増田:僕は普段、丸首のTシャツとGパンと運動靴というのが定番で、滅多にジャケットを着ることはないのです。だから、今日は少しおめかしかな(笑)。

川島:そんなお二人に最初の質問です。社長として、今日、決断したことは?

増田:決断はもう、毎日毎日、瞬間瞬間で、山のようにしています。今日だけでも、既に10個以上はしているはず。会議でも「決めることがない会議はダメだ」と、口を酸っぱくして言っているんです。報告会みたいな会議は全然ダメ。何か目的があってシェアするわけだから、それに対して、誰が、いつまでに、何をしようというのを決めないといけない。人間は、そこから逃げよう逃げようとするから、それを追い回してやるんです(笑)

大西:そういうスピード感、大事ですね。若い世代には新しいモチベーションを与えて、彼らがどんどん変えていって欲しいと思います。ただ、いわゆる中間管理職と呼ばれる人たちのマインドチェンジは難しい。なかなか変わってくれないのが問題ですね。

川島:私はまさにその世代。だから気になるのですが、マインドチェンジしなさいと言われても、なかなか変われない人は、いったいどうすればいいのでしょうか?

次ページ 三越伊勢丹は企画力に欠けている