「適材適所」ではなく「適所適材」

川島:当然、人事も変えられたわけですが、それも大変だったのでは?

黒田:そうですね。ただ、こういうことはシンプルなのが一番と思っていて、「今までやってきたことを覆してでも変わらなければいけない」ことを、率先してやってくれる人を選びました。あと、ひとつの会社になって、僕が全部の責任を取ることになったので、どの仕事をどう任せるのかを明らかにして、それに最適な人にお願いしたのです。

川島:そうは言っても、新社長のもとで人事が変わると、社内にさざ波が立ちますよね。

黒田:だから「適材適所」ではなく「適所適材」と言い続けました。人から入ってしまうと、たとえば「川島さんはあの仕事に合っていないんじゃないか」、「あの人とあの人は合わないから」となってしまう。

 そうではなくて、どういう役割かが先にあって、その役割に最適な人材を配する。あくまで役割ありきということです。まず「適所=役割」を決めた上で、「適材」と思われる何名かのリストを作って、そこから絞り込んで論理的に決めていったのです。

川島:そうすると、役割が明快になっているから「部長をやってください」ではなくて「この役割を果たしてください」となるし、「なぜ、あの人なんですか」と問われた時に、明確な理由が説明できます。

黒田:今までは、たとえば営業のトップと言ったら、数字の責任を持つことが役割みたいになっていて、売り上げを上げることが目的化していく。ただ本質的な役割はそうじゃなくて、どういう収益の作り方をして、どんな中身の収益にするのか。そして、持続的な強みをどうやって作り出すのかということが問われるはず。そこを、「適所=役割」としてはっきりさせたということです。

川島:具体的な数字を付して、収益を積極的に増やすことが経営計画に記載されています。

「数字としてこだわっているのは、シェアと粗利率です」

黒田:数字についてもこだわっています。リーマンショック後、うちの営業利益率はずっと2~3%程度なのですが、これを5%以上に引き上げようと。社外取締役の方からも「5%にも届かない企業が、社員の能力を引き出して価値を生み出し、市場の中で成長していくのは難しい。これは経営者の責任」と、きつく戒められたのです。だから、社長である僕が、企業としてありたい姿を示して、低成長から脱却したいと考えています。

川島:数字ありきではなく、ありたい姿がまずあって、そのために稼ぐ数字ということですね。

黒田:社内で凄く重要な合言葉を「シェアと粗利率」に据えているのです。お客さんが僕らの仕事に対して、本当に価値を感じてくれたら、双方とも数字が上がるはずなのです。利益にあたる部分を、お客さんが仕事の価値ととらえれば粗利率が上がるし、シェアは、多くのお客さんにファンになってもらえる価値になっているかどうかを測る指標です。だから、粗利率が伴った売上、シェアが伴った売上ということを共通言語化し、徹底していきたいと思っています。

川島:多くの企業で、「営業利益を○○出しなさい」「シェアを○○%確保しよう」と数字だけが先立つ目標が多くて、稼ぐことが目的化しているのに疑問を感じていました。でもこの考え方、腑に落ちます。

黒田:そのために「3C」を見据えようという話もよくしています。「3C」とは、「顧客」と「競争相手」と「自社」のことです。そしてこの3つが、ひとつのストーリーでつながっていないといけないのです。

川島:ストーリーでつなぐ?

黒田:よくある事例は、わが社の市場の可能性はこれだけある。競争相手はこんなことをやっている。だから自分たちはこれをやらなくてはならないといったようなこと。でもこの話、ひとつのストーリーになっていないのです。

 そうではなくて、どういう価値を提供すれば、お客さんから評価され、競争相手と異なる独自性が生まれ、これだけの市場を獲得できる。その価値を生み出すために、自分たちはこれをしなければならない。そういったことが、リアルなストーリーになっていなければならないということです。

川島:嘘っぽいストーリーってたくさんあるのですが、リアルなストーリーじゃないと伝わっていかないですよね。