川島:それまでの企業理念は、どんな文言だったのですか?

黒田:「商品を通じて世の中の役に立つ」という文言だったのですが、僕としては、これを変えたというよりも、商品だけじゃなくて「サービス」という言葉や、「創造性」という言葉が大事と思い、言い方を編集し直したつもりなのです。お客さんに対する価値は、あくまで創造性を高めていくところにある。そこを優先させたいと考えたのです。

川島:生活=Quality of Lifeという言葉によって、間口が随分と広がりましたね。

黒田:従来のブランドメッセージは「ひらめき・はかどり・ここちよさ」だったのです。どれも大事なのですが、どれが一番なのかがわからない。だからドメインは、「働く・学ぶ」だけではなく「生活する」ところまで視野に入れなければならないと考えました。

 つまり、お客さんには、安くとか、早くとか、品ぞろえが豊富といった価値に加えて、生活=Quality of Lifeを上げる価値を提供していきたい、それがコクヨという会社の目指すべき方向ということです。また、最後のLife & Work Style Companyは、「ライフとワークを、きちんとしたスタイルで、お客さんに価値として提案できる会社」を意味しています。

川島:ライフとワークは、暮らしの中で切っても切れない存在であり、特にここ数年でスタイルが変化している領域です。オフィスに限らず、カフェも含めて、どこでも働ける環境が整ってきたし、特に東日本大震災を経てから、日常の暮らしを大切にしていこうという機運がじわじわと広がっていると感じます。この基本方針にある文言は、時代との整合性が見えて、企業が社会とかかわる接点も理解できる内容ですね。

黒田:コクヨという企業は、何のために世の中に存在しているのか、どうなりたいのか、ありたい姿を示して、そこにみんなを近づけていくのが僕の役割です。

川島:この基本方針は、どなたが書かれたのですか?

黒田:僕が書いたのですが、もう大変でした(笑)。

「新たな経営理念では、『生活』という視点を明確化しました」

川島:誰もが理解しやすい内容と思います! ただ、ここで言うコクヨらしさとは何なのでしょうか。

黒田:今まで、どちらかというと、安心して使ってもらえる、品質の良い商品を、幅広く全国にお届けすることを、真面目にやってきたのですが、それを少しだけ変えて、一人一人のお客さんの困りごとに対応し、お客さんの創造性が高まるお手伝いをしていく。それは、たとえば「勉強が好きになる」、「仕事をしていて楽しい」ということかもしれません。そうやって人にフォーカスし、課題解決する姿勢が、社風として強くなっていけばいいと考えています。

川島:社風と言えば、誠実で真面目な企業という印象があります。
黒田:誠実さや真面目さは、とても大事なことと思うのですが、変わることに対して、抑制する要素になることもある。だから、同じことを繰り返していく誠実さ真面目さではなく、お客さんのためにどうすればいいのかを本気で考え抜く誠実さ真面目さ、そこに向かうことが重要です。