会社の内に向かって上手くいかないことはない

川島:それぞれの会社の社員が、人のせいにしない、会社のせいにしない。つまり、他人事でなく自分事になったことが良かったのかも。

黒田:効率的に組織を運営するためには分業化も必要ですが、ともするとセクショナリズムに陥っていく。当事者意識を持って目の前の課題に取り組もうとする時、セクショナリズムは障壁になってしまうんです。

川島:そのセクショナリズムを壊すために、英邦さんは、狙う対象を明快にした上で共有化した。そうやって、組織をまとめていったのですね。

黒田:それと、実はもうひとつ、大きな課題があったのです。当時のコクヨファニチャーは、物凄い赤字だったんです。リーマンショックの影響で、オフィスを引っ越すにも、新しい家具を入れるのではなく、前の家具を持っていくみたいな状況だったので。2009年から2010年にかけて、売り上げが3分の2くらいに落ち込んでいたのです。

 それでは会社が存在している意味がないし、みんなにも給料が払えなくなる。とにかく黒字化しようという目標を定めたのです。お客さんを見ようということと、黒字化しようということ、この2つを全員で決めたんです。

川島:それで成果は出たのですか?

黒田:何とか黒字化することができました。

川島:でも、こうやって過去の経緯をうかがうと、コクヨファニチャーのトップとして「まとめる」役割を担ったことが、文房具のコクヨS&Tとオフィス家具のコクヨファニチャーを一緒にする際も役立ったのではと思います。

黒田:実は、同じことをまた、やろうとしていると感じています。コクヨという企業の大きな事業区分は、文具、家具、通販、そして海外の4つですが、それをまとめ上げる責任を取ることになったわけです。

川島:新たな課題や発見もあったと思いますが。

黒田:今、走りながら考えていることは、会社の外に向かって上手くいかないことはあっても、会社の内に向かって上手くいかないことはないと。

 「社会動向による市場の減少」とか、「為替などの経済動向」といった外部課題はありますが、内部課題については、自分たちが明快な目的を持って取り組んでいけば、前に進まないはずはない。それが解決できないのは、ゴールが明快になっていない、あるいは共有化されていないからだと思うのです。

川島:たいがいの会社では、ゴールを明快にするために企業スローガンを掲げ、経営計画を立てたりするのですが。

黒田:手順としてやっていても、実態としてそうなっていない。少なくともうちの会社はそうだったのだと思います。それに僕は、分業化された組織でワンゴールを定める場合、それぞれの目的と目標が掛け算になって、最善・最良の成果を出すようにしなければ意味がないとも考えています。

川島:掛け算ですか?

黒田:今までは、市場に向けて自分たちがどう振る舞いたいかというゴールが描ききれていないから、売り上げが上がっていればいいという状況だったと思うのです。そうではなくて、コクヨという会社が、どういうお客さんに、どういう価値を提供して、どういう風に評価されたくて、どの商品を、どのように作って、どのチャネルで、どう売っていくか。その掛け算が、真っ当な成果を出すと考えています。

川島:言うは易しですが、遂行していくのは難しそうです。英邦さんはどうされたのですか?

黒田:いや、もうベタベタなことの積み重ねです。組織を横串しにし、顔を合わせた議論を徹底して繰り返しています。役員だけ集まって話すとか、幹部だけ集まって話すとか、皆で合宿ということも含め、本気で話し合って理解して、皆で進めていく。愚直なまでにそこを突き詰めています。

 ただこれは、続けていかないと意味がないこと。こういう時代だから、市場もニーズも変わり続けていくわけで、ビジネスモデルや戦略も、一度決めたから3年、5年は安泰といったものではなく、常に「これでいいのか」と、皆で考え続けることが必要と思っています。

※3月3日公開予定の『新生コクヨ、「変革」ではなく「変化」を目指す』に続きます