「百貨店力」とは何なのか?

川島:この数年で、流通業界における合従連衡が激化しているように感じます。正直言って、一般の消費者から見ると、百貨店、ファッションビル、GMSといった業態の違いが、わかりづらくなっていて、百貨店の競争相手が、もはや百貨店ではなく、GMSやファッションビルになっているのではないでしょうか。

大西:その通りです。

川島:ちょっと言い過ぎかもしれませんが、売場の一画で、いつもバーゲンセールをやっていたり、フロアをまるごとファストファッションブランドに明け渡したり、建物の一画をラグジュアリーブランドの大きなブティックにしてしまう百貨店を見ていると、“らしさ”を手放しているようにさえ感じます。そんな中、百貨店というブランドの価値を、大西さんはどのように見ていらっしゃいますか?

大西:川島さん、小売業界の中で百貨店の占めるシェアは、どれくらいだと思われますか? 実はたった5%程度なのです。

川島:えっ、そんなにシェアが小さいのですか。

大西:これが現在、百貨店が置かれている状況で、かつてに比べて圧倒的に小さくなっているのです。一方で、業態区分が体をなさないほど、それぞれの業態における多様化は進んでいます。コンビニのグレードが上がってきて、お中元やお歳暮を手がけるようになっていますし、GMSも巨大で豪華なモールを展開するようになっています。

川島 地方都市の郊外には、ファッションモールから映画館、スーパーまで備えたGMSがあって、一日中、家族で過ごす人たちがたくさんいます。一方で、中心街にある百貨店や専門店は苦戦しているわけです。百貨店が果たしていた「買い物の楽しさ」みたいな役割が、GMSに取って代わられた一面もあるのでしょうね。

大西:その通りです。ファッションで言えば、駅の周辺を含め、便利な立地にあるファッションビルの持っている威力が大きくなっています。また、ファストファッションブランドは、世界市場を視野に入れた圧倒的なマーケティングによって、大きな影響力を持つようになってきている。そんな中にあって、百貨店というブランドの真価が問われている、まさに正念場と言えます。

川島:百貨店“らしさ”とは、並んでいる商品の確かさ、ユニークさもあるでしょうし、商品と商品を組み合わせて見せる面白さもある。ブランドを越え、お客のために最適な商品を選ぶ丁寧な接客も、もともと百貨店が得意としてきたところです。これからの「百貨店力」とは何なのでしょうか。

大西:大事にしなければならないのは、上質さという価値軸です。高額なものが揃っている、著名ブランドが並んでいるということではなく、質が高いものが置かれていて、訪れたお客様に豊かな気分を味わっていただくことは、私たちのような百貨店が行っていく領域だと感じています。三越伊勢丹グループとして、まずスタンダードになるような価値を作って、お客様に広くライフスタイルを提案していくことが重要と思っています。

川島:そううかがうと、百貨店の未来が拓けていくように感じます。百貨店には元気になってもらいたいです。今日は明るいお話をありがとうございました。

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