百貨店協会として休業日と営業時間の見直しを検討していく

川島:この連載の前号では、虎屋の黒川光博社長のお話をうかがったのですが、その際、「食品会連絡共生会」の活動に触れていらっしゃいました。共生会は、年中無休で長時間労働が恒常化している百貨店に対し、問題提起を行ってきた。それに対して、最初に対応したのが大西さんというお話でした。

大西:共生会からお話をうかがった際、まさに私が考えている方向と一致していると感じ、即、実行に移したのです。

川島:日本百貨店協会は共生会からの問題提起に対し、「あくまで各百貨店の判断に任せる」という返答でした。他の百貨店が様子見で動かない中、三越伊勢丹が休業日を設けて最初にアクションを起こしたわけですが、そのことに対して逆風もあったのではないですか。

大西:何もなかったわけではありません。せめてうちだけでもと思ったのです(笑)。

 共生会の方々からも応援していただきました。2016年8月のお盆明け、伊勢丹新宿本店で行った「食品銘店大感謝祭」を皮切りに、私どものために特別なコラボ商品で話題を作ってくださったのです。それが今では、三越にも広がっていて、多くのお客様の来店につながり、ありがたいと感じています。

川島:その時に配られたチラシを拝見したのですが、感謝の気持ちとして「私たち三越伊勢丹グループは、『すべてのスタイリスト(販売員)の心と体のリフレッシュが明るい笑顔を生み、お客様との大切な時間をいっそう濃密なものにする』という“思い”を大切にしています。店舗休業日や営業時間の短縮は、その“思い”を実現するための取組みです。この“思い”にご賛同いただいた『三越伊勢丹食品銘店会』の皆さまのご協力により、第6回三越伊勢丹食品銘店大感謝祭を開催いたします~(以下略)」と書かれています。これって、ちょっと異例のことですよね。

大西:共生会の方々と一緒に考え、お客様にもお伝えした方がいいと判断して作ったのです。

川島:大西さんは、昨年6月からは日本百貨店協会の会長職に就かれました。共生会の運動への対応を、協会として再検討していると聞きましたが。

大西:昨年末に、日本百貨店協会の正副会長会議でディスカッションし、課題解決に向けて、改めて話し合いの場を持つことにしたのです。

 ただこの問題、実は食品フロアだけじゃなくて、他フロアにも共通する課題。百貨店の営業時間の延長によって、ただでさえ人手不足の中、取引先も人材確保が難しくなっている。質の良い接客ができないことは「おもてなし」を大切にしている百貨店にとって大きな損失です。

 共生会との話し合いも、概念の議論で終わるのではなく、結論を出して具体的なアクションを起こしていかなければならないと考えています。

川島:働き方について、世の中でさまざまに取り沙汰されている中、この課題は大きなこと。応援していきますので、これからの動向もまた教えてください。

大西:もちろんです。

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