消化仕入が「モノ作り」を衰退させた

川島:相変わらず厳しいですね。具体的には、どんなところが課題なのでしょうか。たとえば百貨店の取引形態の大半は、消化仕入と呼ばれるものです。店頭に置かれた商品は、売り上げが上がった分が仕入れとして計上され、売れ残った商品は取引先に返品される。百貨店にとってはリスクを負わない構造と言えます。

大西:百貨店全体が抱える課題のひとつと言えます。店頭で売れない→返品が増える→取引先がモノ作りのコストを下げる→モノ作りの現場にしわ寄せがいく→日本のモノ作りが衰退する、という悪循環に陥っているのです。

 サプライチェーンにおいて、返品(=買われない・使われないもの)が増えるのは無駄なことであり、お客様も薄々それに気づいている。消化仕入という取引形態も含め、百貨店ビジネスのあり方自体を探り、新しい試みをしていかなければならないと思います。

川島:その点については、仕入構造改革ということを掲げて既に手をつけていますよね。

大西:まだまだです。百貨店が在庫リスクを引き受けて、生産者と直接取引する試みを2011年から続けていますが、もっとスピーディーに動かなければならないと強く感じています。

川島:靴からスタートした「ナンバートゥエンティワン」はその一つですよね。伊勢丹の靴のバイヤーと、浅草にある靴のメーカーが直接やりとりして、売場でニーズが高かった「低めで履きやすいパンプス」を作ったところ、好評を得たというお話を以前にうかがいました。それが今は、バッグなどにも広がってきています。

大西:お客様に一番近いところにいるのが、私たち小売りなので、本当のニーズをきちんと生産者の方に伝え、一緒にモノ作りしていくこと。それも、「ジャパンセンシィズ」(日本の良さを、新しい価値として国内外に発信する)を掲げているのですから、日本のメーカーと取り組むことを、もっともっと増やしていかないといけないと感じています。

川島:コスト削減を求めて、モノ作りがどんどん海外に移転していますが、日本のモノ作りの良質さは、是非生かして欲しいところです。一方でこの企画は、百貨店として在庫リスクを負うということで、まさに仕入構造の改革でもあるわけです。

大西:ケースバイケースなので一概に言えないのですが、問屋を介さず、バイヤーが直接生産者と取引をして、当社が在庫リスクを負うことで利益を高めようとしています。

 今まではリスクを負わなかったから利益も上げられない状況でしたが、そこを抜本的に見直そうという意図です。売り上げだけを求めて“百貨店らしさ”を置き去りにしてはいけないし、成長していた時代の成功体験を引きずっても、これからの時代には通用しないと思うのです。新しい途を何とか切り拓いていかないと、もう生き残っていけないわけですから。

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