2015年11月までの訪日外国人客数は1796万人となり、政府が2020年の目標として掲げてきた年間2000万人を5年前倒しで達成することが確実だ。円安が定着し、日本でのショッピングがお買い得になっていることで、訪日客によるインバウンド消費は企業業績や日本経済を支える存在になっている。

 その大きな担い手である中国からの観光客を誘致しようと、さまざまな企業や自治体が力を入れている。その裏側で、国別の訪日客数では3位の台湾人向けのマーケティングが後回しにされる傾向にある。日本のことを深く知り、リピーターが多い台湾人観光客にどのように情報発信し、何を魅力として伝えるべきなのか。台湾人向けの訪日観光情報ウェブサイトを運営する、ジーリーメディアグループの吉田皓一社長に聞いた。

(聞き手は熊野信一郎)

吉田 皓一(よしだ・こういち)氏  ジーリーメディアグループ代表取締役社長。慶応義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。総合ビジネス局にて3年に渡ってテレビCMの企画・セールスを担当したのち退職し、ジーリーメディアグループ創業。「台湾で一番有名な日本人」として台湾や日本のTV・雑誌など多くのメディアにも登場し、Facebookページは47万人を超えるファンを有する。
吉田 皓一(よしだ・こういち)氏  ジーリーメディアグループ代表取締役社長。慶応義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。総合ビジネス局にて3年に渡ってテレビCMの企画・セールスを担当したのち退職し、ジーリーメディアグループ創業。「台湾で一番有名な日本人」として台湾や日本のTV・雑誌など多くのメディアにも登場し、Facebookページは47万人を超えるファンを有する。

訪日客というと、どうしても中国からの観光客が旅行者の数や消費パワーの面で脚光が当たります。台湾からの訪日客はどのような状況でしょうか。

吉田:2014年は国・地域別の訪日観光客で最も多かったのが台湾でした。1341万人のうち282万人が台湾からで、全体の3割弱を占めていたほどです。2015年は中国に抜かれてしまっていますが、それでも僅差で中国、韓国に次ぐ3位に付けています。

 旅行者数は2014年と比較してもまだ3割も伸びています。台湾の人口(2346万人)が中国に比べて圧倒的に少ない中、いかにリピーターが増えているかを示しています。もともと台湾や香港はリピーターが多いところでしたが、若い観光客が増えていることもあってまだまだコンスタントに伸びる可能性があります。

確かに、7人に1人が日本を訪問している計算になります。観光の中身も変わってきているのでしょうか。

吉田:日本旅行の定番である東京と大阪は、既に飽きがきています。日本を訪れる多くの台湾人が、もう何度も訪れていますから。北海道も同じような傾向が出ています。結果として、リピーターのニーズが細分化し、訪問する先が多様化しているのが特徴です。

 最近のトレンドとしては、沖縄の人気が徐々に高くなっています。那覇空港にLCC(格安航空会社)が就航したことで、訪れる人が増えていますね。個人旅行がメーンなので、空港でレンタカーを借りて、リゾート地のホテルに滞在するといったように、典型的な日本人の沖縄旅行とほぼ同じスタイルです。

 12月に沖縄で「NAHAマラソン」が開催されたのですが、そこに数多くの台湾人が参加していました。沿道では、台湾の旗を振って応援する人も目立つほどの盛り上がりでした。これは沖縄在住の台湾人の会が中心となったようです。