「セキュリティー」と「利活用」の矛盾を解く

村上:最終的には医療においてもデータをしっかり管理し、かつ利用していくことになる。元気な時にはあまり感じませんが、やはり病気にかかると体というものは摩訶不思議なものだな、と思います。自分と同じ肉体は、1つとして、1人として存在しない。それをどうやってビッグデータ化して解析していくか。

 そのためにはセキュリティーをしっかり確保しつつ、アクセス性をできるだけ良くするデータベースを構築する必要がある。セルソースはそこもしっかり作っていきたいとおっしゃっているので、私が持ち得る限りの知見や人脈を使って支えていきたいと思っています。

データの利活用に関して、例えば消費財のマーケティングデータとか位置情報などと比べて、医療ならではの特性はあるのですか。

村上:やはり一番は個人情報ですよね。本人の裁量権と匿名性をしっかり保証しつつ、色々な人が利活用できるようにする。ベクトルとしては一見逆向きなんだけど、その矛盾はITで解決できると思っています。

 何か特殊な技術が必要なわけではありません。第4次産業革命に向けてIoT、ビッグデータ、AIという3大技術が着々と進化しているので、そこを利活用できたらいいなと。

再生医療や医療のIT化を進めている大企業も増えています。国内外問わず、取締役やアドバイザーになってほしいというお話はありそうですが、なぜバイオベンチャーのセルソースだったのですか。

村上:何というか、上場企業はもういいという思いがどこかでありまして。やっぱり、「これから」という企業をお手伝いしたい。

 命に近接している領域の話なので、もちろんいい加減なことはすべきではありませんが、日本のベンチャー企業にも怖じ気づかずに頑張ってほしいと思う。レイ・カーツワイルに負けるなと(笑)。

日産自動車や神戸製鋼所をはじめ、最近、日本の製造業で不祥事が続いていますよね。海外からの信頼を失いかねないとの指摘もありますが、村上さんはどう見ていますか。

村上:日本人はちょっとミスした人を血祭りに上げる傾向がありますよね。でも私は、溺れている犬は叩かなくていいじゃないの、と思う。溺れている犬はもう十分、「ああ、失敗した。悪かったな」と心底思っているんですから。

 もちろん誰しも、いじめてやろうとは思ってはいないんでしょうけど、ネガティブが先行する風潮はやっぱりよくない。なぜかというと、周りが委縮しちゃうから。勇気を持って一歩前へ進むべきタイミングでも、日ごろからそういう否定や抑圧ばかり見せられていると、どうしても腰が引けちゃいますよね。

 心配事を挙げたらきりがない。そうではなくて、若い人が勇気を持って、はつらつとアイデアを推し進められるような会社、産業界、社会であってほしい。それを少しでもお手伝いできればいいなと思っています。

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