意志が強くないと続きませんね。資格を取ったら年収が1億円になるとか、それは無理でも倍になるとかいうならみんな頑張ると思いますけど。

松浦:その保証はまったく、ないです(笑)。

資格を取ると、会社から資格手当とか支給されるんですか。

小林:(アサヒビールは)ないですね(笑)。

土屋:ウチ(NEC)もないです(笑)。

そうすると資格を取った皆さんには失礼ですが、ROI(投資利益率)が悪すぎるんじゃないですか。資格を取るために投入したお金と時間と労力に対してリターンがないと、「何のために苦労したのか?」という話になりませんか。

11月10日に開催された企業内診断士会交流会の様子。各社から集まった診断士が様々な課題について話し合った(写真:菊池くらげ)

松浦:だからこそ「企業内診断士会交流会」という組織を立ち上げました。もともとNECさんと我々とか数名の診断士で始めた会です。資格を取ってみたけれど、どう生かしたらいいのか分からない。診断士の悩みは一緒です。そこで勉強会をやったりして、相互に情報交換をしています。活動は今年で8年目になりました。

 参加企業はNEC、アサヒグループ、富士通、キヤノン、三井住友銀行、パナソニックグループ、三井物産、日本ユニシス、清水建設、双日など、日本の名だたる企業が名を連ねています。

診断士になると兼業が認められる?

(11月10日に開催された)2017年度の交流会には、監督官庁である中小企業庁から濱田祐治氏(長官官房企画官)が来ていたので、私は率直に質問をぶつけてみました。中小企業診断士という国家資格は宝の持ち腐れで、収入を増やすために他の士業のように独占業務を作るとか、お考えじゃないんですかと。そうしたら、「考えていません」とのお答えでした。

小林:はっきりしていますね。

ただ、頭の体操は始めていると。例えば、今日本でも兼業や副業を認めようという機運が高まっていますが、中小企業診断士の資格を取った人には年間で何時間とか、何十時間とか、兼業や副業を認められるように、企業に促していくことは考えられると。企業に勤めている中小企業診断士が独立しようとしても、社外での実績がないとうまくいかない。そこで実績を積むための環境を整えようというわけです。

松浦:安倍政権として、「人生100年時代」を見据えた経済社会の在り方をいろいろと考えているところですよね。大企業でも、中小企業でもミドルの活用というのが非常に重要になってくる。70歳ぐらいまで元気で働ける人は、これからどんどんと増えるわけですから。企業でさまざまな経験をしてきた中高年がいる。その経験や人脈を求めている人や企業がどこかにはいるはずで、まさにそこは我々診断士が活躍すべきところではないかと思っています。

 例えばアサヒビールがお付き合いいただいている酒屋や飲食店は大半が中小企業です。だから、単にうちの商品を置かせてくださいとお願いするだけではビジネスは成り立たないわけでして、いかに経営者に寄り添って、その経営をサポートしていくかという視点が不可欠となります。やっぱり経営者は孤独ですから、そこに寄り添う立場でアドバイスすることで、我々の資格と仕事が生きてくるはずです。

 直接売り上げにつながらなくても、経営相談に乗ることで、こいつは信頼できるということになればいろいろとお問い合わせもいただけますし、そうしたら相手の悩みも分かりますので、より関係が強化されます。

診断士同士で協力したりすることがあるのですか。

松浦:あります。中小企業診断士というのは横のつながりが強いんですよ。我々が相談に乗っているとき、IT関連で困っていることがあればNECさんに協力してもらうとか、法律関係で問題があるときは法律に詳しい診断士に相談したりとか。診断士のネットワークが1つのプラットフォームとして、いろいろな企業のお役に立つのではないかと思っています。

NECの土屋さんは、この資格を取って自分の仕事にプラスだったということはありますか。

土屋:NECでは最近、いわゆる社会ソリューション事業に注力しています。以前は携帯電話とかパソコンとか、BIGLOBEとか、BtoC向けのビジネスが多かったのですが、もっぱらBtoBにシフトしてきました。

 社会ソリューションと言うからには、やっぱり社会の課題をきちんと把握して、その上でお客様に解決策を提供しなければなりません。そこで生きるのが診断士の資格です。例えば、地方の商店街に出向いて診断士としてお話を伺います。そうすると商店街としてお客さんを呼び込むため、無線LANを設置したいがどうしたら良いか悩んでいるというお話があれば、社内の担当部署につなぎます。それをきっかけに、POSとかレジとかNECが扱っている商材にも話が広がっていきます。