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ひとりのジャーナリストはどのくらいの頻度で記事を書くのでしょうか。

エルンスト:だいたい3週間ごとに大きな特集記事を出しています。ただ、その間もジャーナリストは複数の記事を書いているのが普通です。また、週に1回、自分をフォローしている定期購読者向けにニュースレターを出すことになっています。質の高い記事を書くために十分な時間を与えていると思います。

有料のメディアですが、記事のシェアは自由という話です。

エルンスト:記事リンクを手に入れれば、誰でもその記事を読むことができます。定期購読者向けの有料メディアですが、ペイウォールはあってないようなものです。なぜそうしているかというと、私たちのジャーナリズムに読者がお金を払ってくれると信じているから。定期購読者がシェアしたい人に記事をシェアする機会は与えられるべきです。

 ただ、定期購読者が読者でない人に記事をシェアした場合、読者でない人が記事を開くと「この記事は有料購読者の××さんがあなたにシェアしました」と表示されます。それを見れば、誰がお金を払った記事なのかということが分かる。読者は私たちの親善大使のような存在です。彼らがThe Correspondentのジャーナリズムを拡散してくれています。

ということは、新規読者の獲得は読者経由の口コミがメインですか?

エルンスト:新規開拓は読者経由。ソーシャルメディアのシェアが最大のドライバーです。

現在の定期購読者はどのくらいでしょうか。

エルンスト:定期購読のメンバーは6万人、シェアされた記事を読んでいる人は月に200万人に上ります。オランダの人口は1700万人しかいません。

編集体制について教えてください。

エルンスト:フルタイムで働くジャーナリストは21人います。また、編集者がふたり、校閲担当が3人、デザイン担当がふたり。私たちが作った職種ですが、会話担当の編集者もいます。これは読者とジャーナリストのコミュニケーションを見ている担当編集者です。

会話担当の編集者は具体的に何をしているのでしょうか。

エルンスト:例えば、ジャーナリストが読者に呼びかけてもあまり反応がない場合があります。そういう場合は会員データベースをチェックして、そのテーマに関係のありそうな人を議論に招待するのは会話担当の仕事です。会員データベースに適した人がいなければ、そのテーマに相応しい業界の人に1カ月のフリートライアルの案内を送る。

どのように読者を巻き込んで記事を作っているのか、もうすこし詳しく教えていただけますか。

エルンスト:基本はコメント欄を通じたコミュニケーションです。例えば、医療問題を担当しているジャーナリストは医者や病院関係者向けに普段は記事を書いています。それに対して、医療業界や患者などがコメントという形で反応する。そうして議論が始まり、ジャーナリストは問題意識や知識を深めていく。その後、医療業界に関係ない全読者向けの大きな記事になっていきます。

 こういうケースもありました。気候変動を担当しているジャーナリストは石油業界の人と地球温暖化の脅威について話し合いたいと考え、記事でロイヤル・ダッチ・シェルの社員に呼びかけました。「エネルギーの将来についてどう考えているか、それがあなた方の仕事にどう関係しているかという点を話し合いましょう。匿名でOKです」と。

 すると、20人の社員が呼びかけに反応しました。そこで、取材したジャーナリストは匿名のものを含め会話のトランスクリプトを公表、さらなる議論を呼びかけた。最終的にシェルが1990年代初頭に地球温暖化の脅威に関する社内向けのドキュメンタリーを作っていたという事実に辿り着きました。『不都合な真実』の10年以上も前の話ですよ。この記事はグローバルに取り上げられました。

 つまり、The Correspondentの読者はふたつのタイプの記事を読んでいると言えます。ひとつはすべての読者向けに書かれた特集記事、もうひとつは自分がよく知っている業界の専門記事です。エネルギーセクターで働いている読者であれば、自分がコントリビュートしているエネルギーセクターの記事と、全体向けの記事の両方を目にする。

 あらゆる記事には読者に対する質問があります。医療業界における官僚主義に関する記事であれば、「あなたは医者ですか?あなたの仕事に官僚主義がどのような影響を与えているのか教えてください」「患者さんですか?あなたが受けた治療にどういう影響があったか教えてください」と聞きます。あらゆる記事にそういう質問を入れることで、読者に貢献したいという私たちの思いが伝わる。