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従来の新聞との違いはどこにあるのでしょうか。

エルンスト:基本的に、私たちはニュースは無視しています。当社のジャーナリストにも、「この分野をカバーしてほしい」という話はしていません。彼らは自分の専門領域を持っています。それは読者が懸念すべきトピックであり、読者に関係のあるトピックのはずです。気候変動問題かもしれないし、教育の未来についてかもしれない。

 私たちは当社のジャーナリストにこう言います。「読者の話を聞いてください。その分野の専門家に取材してください。本当に重要だと思うことをカバーしてください」と。間違っても、アメリカ大統領のツイートをレポートしろなんてことは言いません。そこが違いです。

 ジャーナリストには透明性を求めています。新しい企画を思いついたときは必ず読者に中身をシェアしてもらいます。読者に議論に参加する機会を与え、個人的な体験をシェアできるようにするためです。

 例えば、医療における官僚主義について当社のジャーナリストが記事を書いたことがありました。その時、彼はアイデアを読者にシェアして、こう尋ねました。「医療における官僚主義について記事を書こうと思います。専門家として官僚主義の影響を受けたことがあれば、あるいはご自身の治療の際に感じたことがあれば是非知らせてください」と。

 その後、数百の医者が役所のフォームを埋めるために無駄な時間を費やしており、患者の治療にかける時間が減っているとメールしてきました。

 読者に情報をシェアするのは企画の時だけではありません。彼は取材の途中にインタビューのトランスクリプトや読んだ書籍を積極的に読者に公開したので、読者がリサーチにどんどん加わるようになりました。ジャーナリストが記事を作っていく様子を見ることができたからです。

 これこそが、The Correspondentがやろうとしているジャーナリズムです。究極的に言えば、そういう記事はあらゆる読者に刺さるものになると思います。だって、数百の読者が参加しているのですから。

ジャーナリストはどういう分野をカバーしているのでしょう?

エルンスト:オランダ語版を見れば、ジャーナリストのカバー範囲がぜんぶ分かります。例えば、エネルギーと気候変動、酪農産業、セキュリティ産業、AI、高齢化、アパレル、民主主義、教育、移民など。例えば、移民問題を追いかけている女性記者は移民が流れ込む欧州という観点ではなく、移民や難民が生み出される祖国に焦点を当てた記事を書いています。これは既存のメディアとは異なる視点だと思います。

 他にも、モビリティと都市、政府債務、進歩主義、欧州連合(EU)、スポーツと統計、テクノロジーと監視などが記者の専門領域です。こちらがジャンルを決めるのではなく、あくまでも採用したジャーナリストが情熱を持っている分野が私たちのカバー範囲です。そこも従来の新聞とは異なるところでしょう。もちろん、専門領域は変えることも可能です。

 The Correspondentを立ち上げた時に、私たちのモデルを信じてくれるジャーナリストを探しました。その時に彼らに聞いたのは、「私たちはどの分野をカバーすべきでしょうか。あなたが最も情熱を持つトピックは何でしょうか。なぜ重要かということを読者に説明できるトピックは何でしょうか」という質問でした。このように、基本的にジャーナリストに任せています。

 ただ、読者がカバー領域を求める場合もあります。例えば、アパレル業界をカバーしないのかという問い合わせを読者からたくさんもらったため、アパレル業界をカバーできるジャーナリストを探したことがありました。サステイナブルな体制で生産された洋服を着たいと考える読者が大勢いたんです。