「空気を使うエンジンには、どうしても越えられない壁がある」

そこにパイクスピークに電気自動車で挑む意義があると。

田嶋:そうです。F1サーキットのような環境だと、あまりにも市販車が走る環境とは異なるので、市販車への技術フィードバックの道が遠いんですね。バンクが付いているとか、特別な舗装がされているとか。

 しかし、パイクスピークは一般の観光道。ガードレールがない富士スバルラインを思い浮かべていていただけると、イメージが湧くかと思いますが、そこで早く安全に走れるクルマで勝ち続けることができれば、結果的にそれが市販車に最もふさわしい技術と言うことだと思います。それが、私がこれまでずっと、パイクスピークに挑戦してきている理由でもあります。

電気自動車になると、バッテリーにモーターを付ければ誰でも作れるようになるので、参入障壁が低くなるとも言われます。本当でしょうか。

田嶋:いやいや、ものすごく難しくなりましたよ。バッテリーにモーターを付けたら誰でも作れるなんて、とんでもありません。人間が乗るとなると、乗り心地から安全性まで、ドライバーはいろいろなことを要求しますよね。いい車を作るための条件は山ほどあります。それを、電気自動車で極めていこうというのは、ものすごく大変です。

 私たちがやっている4輪独立制御というだけで、エンジン1個に比べてその4倍もやることがあるわけですよ。それに加減速が加わると、それだけでさらに二乗です。逆に、それらを全て解決していけば、ものすごく可能性がある。

 私は、子供の頃からバイクのエンジンを触り始め、パイクスピークに挑むまでになって、もう、内燃機関はしゃぶり尽くしたというか、これ以上はにっちもさっちもいかないという、限界を知ってしまったんです。ようするに、空気が必要なエンジン車と言うのは、どうしても越えられない状態、つまり、真空という壁があるんです。これは、もう逆立ちしても、気体を使っている以上、限界です。

 だから逆に言うと昔の内燃機関が大好きなんですよ。だからこそ、電気自動車で、さらに高い技術にチャレンジしているわけです。勝つことが目的ではなくて、勝って電気自動車の可能性を証明したいですね。

(写真提供:タジマモーターコーポレーション)