永守:ずっと以前からそれを言ってきています。ロボット関連部品で言えば、モーターに減速機などをつけたモジュール(複数の部品が一体化した機能部品)を作ることを進めてきた。M&Aも同様。最近では、今年8月にグループの減速機メーカー、日本電産シンポがドイツの減速機メーカー、MSグレスナーを買収しました。

 日本電産シンポは一言でいえば、(水平方向など)入力と同じ方向に機械を動かす際の動きを効率化する減速機が得意です。これに対し、MSグレスナーのそれは垂直方向への動きに使うもの。これで縦横いずれの動きにも対応しやすくなるわけです。

 モジュール化したより高機能な製品の開発に早くから取り組んできたからこそだと思っています。

産業界では数千億円規模の大型買収が珍しくなくなっていますが、MSグレスナーも買収額は50億円程度と見られるなど小型のものを積み重ねています。

永守:2017年には米電機大手エマソン・エレクトリック(ミズーリ州)の産業用モーターや発電機などの事業を買収した。かなりの規模(買収額は12億ドル)でしたが、そうしたものに小型の買収を組み合わせていくのが私のM&Aの仕方。石垣の大きな石の間に小さな石を入れるような詰め物型買収と呼んでいるけれども、これをやっていくことで強い技術を作っていくことができるのです。

 最近はやりの大型買収はほとんどが高すぎる。私の計算ではその88%が後に業績悪化に追い込まれ、減損せざるを得なくなっています。

将来の市場の姿を予想して、そこに向けて順々に形を作っていくというわけですか。

永守:大きな買い物をして、どんと売上高を押し上げるようなやり方はとりません。例えば、2017年のエマソンでも狙いの1つは再生エネルギー向け発電機でした。ドイツやイタリアは原子力発電を止めることにしたので、欧州での再エネ需要は大きくなる。

 再エネには蓄電機構や発電機が必要で、蓄電の方は先に持っていたから、発電機の会社を次に買ったというわけです。必要な技術を順々に買い、自社でも育て整えていくのです。

中国は今後も成長、着実に投資をするつもり

中国の高齢化も市場の変化要因としてかねて注目してこられました。

永守:そうですね。工場の自動化は世界的に大きなトレンドですが、中国にもそれがくるとかねて思っていました。中国と言えば、かつては労働力の安さが売り物で、それはここ7、8年変わっていた。次第に人件費が上がって来ていたからです。でも、自動化機械の必要性まで早くから注目する声は少なかったと思います。

 しかし、私は工場で人が集めにくくなると見ていました。賃金が上がってくれば、無理にきつい仕事をしたくなくなるだろうし、一人っ子で育った若者達の中にはそんな意識も強くなってきた。

 だから余計に自動化が必要になるのです。元々、日本に比べ転職が多いという側面もある。市場は大きなトレンドと、その中で起きてくることを絶えず予想し、ストーリーを考える。そして、自社で何ができるか、どうしないといけないかのストーリーも常に考えていないといけない。そう思いますね。

米中貿易摩擦が激化しています。今後の中国投資は変えるのですか。

永守:貿易戦争はしばらく続くでしょう。それに対応して中国から米国に輸出している自動車や家電部品の生産の一部をメキシコに移すつもりです。車載用ではパワーステアリングのモーター、家電向けはエアコン部品などの生産を移管します。

 しかし、輸出需要にブレーキがかかったから中国投資を止めて、また良くなったら再開するようなやり方はとらない。中国では着実に投資するつもりです。半年程度のスパンで見ると、中国は影響を受けるかもしれませんが、長期で見るとやはり中国は成長する。米国よりも成長する。むしろ今は中国投資のチャンスだと思いますね。